第1話 出会い
土砂降りの雨の中、大学で授業を終えた心は家路についていた。
傘をたたみ、駅のホームに向かう。
たくさんの人が行き交っている。赤い彩の人。青い彩の人。オレンジの彩の人。色々な彩が視界に入って目がチカチカする。
「だから電車は嫌いなのよ…」
愚痴をひとつこぼして、少し遅れた電車に乗る。電車の中はホームよりも人が多く、人混みと彩に酔う。
15分程で、目的の駅に到着した。私は逃げるように駅から出た。
先程に比べると、雨足が弱まってきているようだった。
駅から離れ、人通りがなくなってきた。
雨が降っていて、出歩いている人も少なく、まるでこの世界に私しかいないんじゃないか、という中学生のようなくだらない考えが浮かぶ。しかし、そんな考えはなくなる。少し先に誰か立っているのだ。
「…こわ」
傘もささずにただ突っ立っているものだから、つい、そう口にしてしまった。
この道は一本道なので、嫌でも通り過ぎなければならない。少し距離を取りながら恐る恐る近づく。近づくにつれて、だんだん顔も見えてきた。どうやら高校生くらいのようだ。
服がところどころボロボロで、しかも頬にはアザができているようだった。
それに加えて、この子には彩がなかった。
だが、あまり面倒事には巻き込まれたくない。
そう思って、黙って通り過ぎる。
けれど、少年に彩がなかったことがどうしても気になった。今まで、そんな彩はあの時以外に見たことがなかったので、好奇心がわいてしまったのだ。
「君、なんでこんな所にいるの?」
私は、とうとう声をかけてしまった。
「帰る家がないんだ」
少年は淡々とした声でそう言った。
やはり彩はない。
「傘ささなきゃ、風邪ひいちゃうよ」
「お金ないから」
…どうやら、無計画で家を飛び出した家出少年のようだ。
「ついてきて。とりあえず雨が止むまで家にいさせてあげるから」
彩のない少年について知りたくなったのと、可哀想だ、という良心から、ついそう口にしてしまった。
「でも…」
「いいの!」
そう言って、強引に連れて帰ってしまった。
あなたの色 柴戸ひな @shibako0627
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