あなたの色

柴戸ひな

プロローグ

私には「彩」が見える。

__「彩」とは、人の感情を色で表したオーラのようなものだ。__

物心着いた頃から、私には「彩」は見えていた。どんな人間にも、必ず彩はある。いつでも、どんな時でも、だ。

でも、5歳くらいのとき、彩のない男の子にあったことがある。どこまでも深い、綺麗な青色の瞳をしている男の子だった。でもその子はアザだらけで、服もボロボロだった。しかも、その子の彩には色がなかった。正確には、彩はあったが、彩度のない灰色だった。彩はその都度その都度の感情で色が変わるのだが、その子はずっと灰色だった。私は今までそんな色の彩を見たことがなく、困惑した。

「私ココロ!君は、だれ?君には、感情、ないの?」

幼かった私は、思ったことをそのまま口にした。

「僕…は、レン。楽しい…とか、嬉しい…とか…は…よくわかんない…」

男の子は、拙い言葉でとぎれとぎれにそう言った。

私は、男の子に「楽しい」を教えてあげたかった。

「じゃあ、私が楽しいこと教えてあげる!!」

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