第29話 打開策
俺がそう叫ぶとメンバーが皆自分を見つめる。そうか。他のメンバーには言っていなかったな。
「ああ、最初に元俺の家に行ったときに柏木に攻略コンソールを増設、もしくはOPWのコンソールを乗っ取れないか確認して欲しいって頼んでおいたんだ。詳しくは柏木に会って話をしよう」
「新海さん。攻略コンソールの増設は材料と時間の関係で作成できなかったのですが、乗っ取りの件はなんとかなりそうです。なぜだかはわからないのですが、教師も含めて1クラスまるまる居なくなった教室があるんです。そこの空間を偽装すれば教室の攻略コンソールが利用できるようになるはずです。あとは回線をこちらに接続するだけなんですが、それは向こうから操作しないとダメで……」
「なるほど。端末の都合はついたが、学校の教室まで忍び込む必要があるわけだな?」
「はい。そういうことです。学校は教師に加えて生徒、警備ロボも多数巡回してます。その中をどうやって抜けるかが問題になります」
「ロザリオさんセルシスさん、成績優秀者ということで学校に何らかの許可をもらうことはできないだろうか?」
「ダメね。私達攻略組は以前説明した通り非正規なの。だから私達は学校の管理簿からは抹消されているハズだわ」
「あの。ロザリオさん。私はサラと同じで、まだ学校に睨まれていない状態だと思います。教室でUGW落ちしてますから。単純にUGWに落ちた生徒、という扱いになっていると思います。なので、私の生徒証を使えば学校に入れるかもしれません」
「あの。セルシスさんの学校はどこですか?僕が確保した教室がある学校と同じじゃないと今の案は実行できないかと……。ちなみに、対象の学校は新海さんの居た学校になります」
結局、学校が違うということでセルシスさん案はボツとなった。しかし、対象の教室が自分の学校だとしたらなにか出来るかもしれない。
「そうだ。柏木くん、OPWのプレーヤーとUGWのプレーヤーが入れ替わったとき、そのことをOPWの運営に悟らせない方法はあるか?」
「あります。恐らくですが短時間、そうですね……。UGWからのアタック一撃で対象を攻略すれば運営に気が付かれることなく入れ替わることは出来るかもしれません。でも。その方法は教師を攻略する必要があります。教室の鍵を開ける権限を持ってますから」
「教師を一撃か。なかなか難易度が高いな。そしてUGWに誰か戻って実行するしかないな。その役は必然的にID持ちでシステム攻略レベルが高い人、となるわけだが。だとすると雫かアリーシュさんになるのかな」
「俺もIDを持っているぞ」
ガルが手を挙げる。確かにそうだ。しかし、ガルは完全に信用していいのかわからない。雫も個人的には気になる点がある。そうなるとアリーシュさんが適任になるが……。そうだ。UGWの攻略コンソールは2名1組の運用だ。教師と入れ替わる予定のプレーヤーは1人、しかし、ここにいるメンバーを欠くことはできない。誰かUGWにこの計画を知る人物は居ないか……。
「ガルさん?ちょっといいですか?」
「なんだ?ウィルか。ちょっと今は立て込んでてな。手短に頼む」
「あの、ブルードッグの攻略コンソールなんですが、作業欠員者が出てきてしまってアラートが鳴りっぱなしなんです。常に満席じゃないとダメみたいで」
「そうだ。ウィル、ウィルがいるじゃないか。アリーシュさん。UGWに戻ってウィルをバディにして教師を攻略してくれませんか?」
「構わないが、ブルードッグのアラートの件はどうする?今まで空席が出来ることなんてなかったからどうなるのか分からない。他のエリアからID持ちを呼び寄せればいいのかもしれないが、ブルーマスターの居ない状態でそれをやるとエリアを乗っ取られる可能性がある。そうなるとブルードッグが自由に使えなくなる可能性がある」
「ああ、その件なら問題ない。ヴェリントンのメンバーを向かわせる。そんなときのためにID保有者を集めてたんだ。計画は知らん連中だが、攻略コンソールを使えばブラックマネーが手に入るんだ。ボーナスゲームとかなんとか言えば問題ないだろう」
ガルの申出により、喫緊の課題はなんとかなりそうだった。あとの問題は教師を一撃で攻略出来るのかどうか、になる。流石に教師ともなると、攻撃を受けたら何らかの対策はしてくるだろうし、職員会議で情報共有されることも考えるとチャンスは1回と思っておいたほうが良い。
「アリーシュさん。教師を一撃で攻略できるようなプログラムってないですか?」
「うーん……。今までそういうリスクの高い対象は攻略対象外にしてたからなぁ……。通用するのか自信がない」
結局、いきなり教師に挑むのではなく、他のプレーヤーを狙って徐々にランクを上げていって通用するのか試す、という方法を取った。時間がかかるが仕方がない。その時間を使って、手に入れた鍵を使ってなにかできないかミストラルエリアの塔に行って確認しよう。
「どうですか?アリーシュさん。なんとかなりそうですか?」
「かなり近いランクまでは通用したから、なんとかなるかも知れない。でも、この前の警備ロボが出てきた場合、セキュリティホールは見つけているというものの、正直ウィルの実力じゃ抑えきれそうにないわ。そっちはなにか新しいことは分かった?」
「いえ。現状変わらずです。警備ロボの件ですが、それは出現したらこちらの攻略コンソールを使ってハッキングします。セキュリティホールの内容を送信しておいてください」
とりあえずの準備は整ったというところだろうか。警備ロボは一度ハッキングの練習をしたいところだが、こちらの環境では失敗したらコンソールそのものが使用できなくなる可能性がある。ぶっつけ本番でやるしかないか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます