第24話 救援
「ふざけるな!こんなの倒せるわけがない!ガードシステムすら突破できない!5人全員で攻略可能って聞いたけど、相手も5人同時に反撃可能なのかよ!ローラインのウォールも一撃だし、リフレクトに至っては効果すらない!リカバリーの使用回数がつきたら終わるぞ!」
「確かに不味いわね。雫さん!さっきの破壊の魔術で相手の防御システムだけ破壊できない!?」
「分からない!あれ、加減ってモノを知らないのよ!最悪、鍵ごと消滅させちゃう可能性がある!」
さっきから全員で一点集中攻撃を行って防御システムに穴ができたところで俺の一撃を入れているが、次の防御システム攻略に入る前に壊した防御システムの修復が行われてしまう。本体システムを攻撃するには、何層あるのか分からない防御システムを一気に突破して本体システムにコネクトしないと話にならない。
「新海くん!新海くん!聞こえる!?」
「アリーシュさんですか!?」
「そう!そっちのエリアボスと交戦中って柏木くんに聞いたの!状況はかなり悪いって!そこで試してもらいたいことがあるのだけれど、あなた達全員のコネクティングポートをこちらに接続して貰えれば、3倍の人数で戦えると思うの!」
なるほど、やってみる価値はある。俺は早速全員のコネクティングポートナンバーを聞いてアリーシュさんに伝える。情報共有を行うために音声はオープン回線で共有して接続を試みると、目論見通り全員UGWプレーヤーと連携できた。
「成功したわ!それじゃ、こっちは集中して防御システム攻略に注力するから、そっちはシステム攻略に専念して!」
雫はUGWに指示を出し、それに同意したロザリオはこちら全員に防御システム攻略の指揮を執った。
「ローラインさんはウォールに集中!システム攻略は考えなくていいわ!その他のメンバーは私が指示した箇所の防御システム攻略に集中!雫さんはその場所をあっちに連携して頂戴!」
ローラインさんは次々に防御システム攻略の場所を変えて立ち回る。ついて行くので精一杯だったが、なんとか全員それぞれの仕事をこなしていった。
「そこ!わき腹の辺りだわ!右側!集中して突破するわよ!」
どうやら防御システムは場所によって防御システムの分厚さが異なるらしい。その薄い場所を探し回っていたようだ。
「うそ……シルバー……。あの強さでシルバーだっていうの……」
「ロザリオさん、どういうことですか……」
「エリアボスを攻略すると、こうやって鍵を落とすのだけれど、強さによって色が違うって言われてるの。今まで攻略組が撃破したことがある3体は木製でブロンズメッキ、シルバーメッキ、ゴールドメッキだったの。そこから後の4本は金属の鍵じゃないかって言われてたんだけど、あれでゴールドじゃないなんて……」
ロザリオさんが絶望するのも仕方がないかも知れない。UGWから参加したプレーヤーはこちらの世界でレベル100相当だ。それにもかかわらず23人が虚無に落ちた。つまり、こちらの世界だけの戦力ではどうにもならなかったということだ。シルバーでこの状況だ。ゴールドの攻略なんて出来るのだろうか。
この戦いでロザリオさんと雫を除いた全員がレベル100になった。レベル1のローラインさんが100になったということは俺はレベル上限に引っかかってそれ以上は上がらなかった、ということだろう。鍵を獲得したロザリオさんはレベル132になっていた。あれを倒してレベル上限140にならないのか……。
「ふー……。なんとかシルバーは撃破出来たけど。雫さん、なんであなたは無傷なのかしら。他のみんなは満身創痍だわ」
確かに雫だけが無傷だ。あれだけの激闘にも関わらず、だ。
「さあ、なぜかしらね。私は特に特別なことはしていなかったわ。ロザリオさんの指示通りに防御システム攻略に専念していたわ」
確かに雫は特に変わったことはせずに、皆と同じく防御システム攻略に専念していた。雫についたUGWプレーヤーのレベルが高くて防御システム攻略プレーヤーに攻撃が届かなかったのか?それとも……。
「ロザリオさん、さっきレベルが見える魔術があるって言ってたと思うけど。今のロザリオさんのレベルで雫のレベルは確認できるかい?」
恐らく、雫のレベルが計測不能だったのは雫がレベル120以上だったから、と考えるのが妥当だ。今のロザリオさんはレベル132、それでも継続不能になるのなら、雫はそれ以上ということになる。
「……計測、不能のままね」
「雫、おまえ一体何者なんだ。なぜレベル計測不能になる?」
「わからないわよ。私はこっちの世界に来るのは初めてだし。そのレベルっていうのに自分を当てはめたことがないものでも、私にコネクトしたUGWのプレーヤーは一人も虚無に落ちていないから、多分、私はそれなりのレベルである可能性は否めないわね」
「一人も……いない!?私でも4人が攻略されてしまったのに!?」
ロザリオさんは驚愕の声を上げた。
「単純計算で私の4倍の戦力ということになるわよ!?レベル480!?あり得ないわ!そんなレベル!」
「だから分からないって言ってるじゃない。確認できる手段があればいくらでも確認してもらっても良いわよ」
レベル480。そこまでのレベルがあれば雫一人で防御システム攻略ができた可能性がある。でも雫はそれをやらなかった。出来なかったのかも知れない。なんにしても雫はやはり何かを隠している可能性がある。
「新海くん?聞こえる?ちょっと聞きたいことがあって。こちらで雫と一緒になって攻略していたプレーヤーがブロンズの鍵を入手したのだけれど、これが何かわかる?」
ホログラム通信機に映し出されたのはブロンズの鍵だった。
「うそ……」
セルシスは口に両手を当てて今にも泣きそうな顔になっている。
「木製のブロンズキー……ヒリアスが持っているはずの鍵……。それをあいつが持っているってことは……ヒリアス……」
ロザリオさんの説明によると、鍵を持っている状態でエリアボスに破れると、所持していた鍵も奪われる、とのことだった。つまり、木製のブロンズキーを持っていたヒリアスは先程のエリアボスにやられてしまった、ということになる。
「ヒリアス……なんで……私が居ないのなら4人だったはず……なんで撤退しなかったの……」
理由は入ってきた石扉に行って判明した。扉の内側にメッセージが書かれていた。
『消えたセルシスを探索していたが、激しい吹雪に見舞われてウォールの使用制限が限界突破した私たちはこの洞窟に逃げ込んだ。その瞬間、この石扉は閉じ、開くことが出来なくなった。この先にはエリアボスの部屋がある。一度戦闘したが、メンバー一人が一瞬で攻略されてしまった。我々は撤退し、このメッセージをここに記載する。出来ることならエリアボスとの戦闘は避け、別の出口をなんとか探して欲しい』
その他には、このダンジョンで出現する敵の特徴、エリアボスの攻撃特性などが記載されていた。我々はなぜこのメッセージに気がつかなかったのだろう。石扉が閉まった後に確認しに来たはずだ。
その疑問を感じながらも、皆がヒリアスの死に沈んでいた事もあって、俺から話すことはしなかった。
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