第23話 エリアボス
「ふう。なんでそんな適当なのかしら。私があなたの意図をくみ取らなかったら死んでたわよ?」
「なんにしても上手く行ったんだからいいじゃないか」
丸焦げになったトカゲもどきをロザリオさんがシステム攻略してこの一戦は終了した。
「で、どうでした?ロザリオさん。俺たち、使い物になりますかね?」
「とりあえず及第点、かしらね。さっきのあれ、レベル92だから。あなたとローラインさんだけじゃどうにもならなかったと思うわ。敵の防御を突破できなかったと思う。あの手段じゃね」
ロザリオさん曰く、さっきの敵を攻略する正攻法はウォールとリフレクトを駆使して敵に近づいて、ブレーカーで防御を破り、システム攻略を行う、これを繰り返す、とのことだった。
俺のような方法は雫のように敵のスキルを盗めるプレーヤーが居ないと正立しないし、敵が最後まで攻撃系スキルを使い続けていたら攻撃しても相手の防御スキルに阻まれて自爆するだけだと。しかし、これで俺のスコーチングヒートは使い物になる事が分かった。
「ところでロザリオさん。ローラインのレベルは1だけど、スキル……魔術レベル換算の全体レベルはどの程度と見ますか?」
「そうね。ブレーカーが使えるプレーヤーはレベル80以下では見たことがないから少なくともそれ以上、なのかしら。それと、あなたのスコーチングヒート、だっけ?灼熱の魔術みたいだけど、きっと防御系魔術の前では効果がないと思うわ。でもそれが解除できればかなりの攻撃力だと思う。ある程度の強敵でも防御を破ってヒット出来ればかなり楽に攻略が出来ると思うわ」
なるほど。俺のスキルはそういうものなのか。正直、かなり役に立たない。防御系スキルを解除しなければなんの役にも立たない。これはローラインの武器になる、という立ち位置が最善かな。それにしても、雫は何でシーフスキルで相手のスキルを奪わなかったんだ?奪えばこの先の戦闘でも役に立つだろうに。あ、奪うには相手の両手を握る必要があるんだっけか。あいつの手ってどこなるんだ?システム攻略しても消えないが、今から手を握っても奪えるのか?
「雫!もうコイツ、動かないみたいだからスキルシーフでスキルを奪っちゃえば?」
「いやよ!こんなわけの分からないやつのスキルを盗むなんて!それにこの丸焦げの気持ち悪い死体を握るなんて絶対にイヤ!」
ワガママな……でも確かに、スキルを奪ったらなにが起きるのか分からないのも事実だ。実際、ロザリオさんに聞いてみたところ、相手の駆使する魔術を奪うことなんて聞いたことがないと言っていたし。
「それで……雫さんなんだけど」
ロザリオさんは雫に向かって厳しい目を向けて話し始めた。
「スティール、相手の魔術を盗んで行使する魔術なんだけど。さっきも言った通り、その魔術はエリアボスが行使するレベルの魔術なの。ここに入る時に見せた封印の魔術といい、あなたは高位の魔術を数多く使えるみたいね。他になにかあるのなら事前に教えてくれると助かるわ」
口調は穏やかだが、少し棘のある内容だ。まだ、隠し事がある前提での質問だ。
「そうね。あと扱えるのは破壊のスキル、かしらね。相手のシステム攻略なんて無視して完全にシステムを破壊するの。でもシステムコアまで破壊しちゃうから、なんのアイテムも手には入らないし、きっと鍵を持っていたとしてもそれごと破壊しちゃうわ。だから使えない」
「破壊……禁術レベルじゃない……。存在そのものを消し去るってことでしょ?そんなのこの世界を想像した者にしか行使できない魔術なんじゃ……」
「あら。そんなこと無いわよ。このスキル……魔術はあなた達にも扱えるはずよ?どこまで壊せるか分からないけど」
雫はそう言うとロザリオさんにスキル移譲を行い、ロザリオさんは、その辺の岩の構造システムを破壊した。呆気なく消えて無くなる岩塊。確かに全てを破壊してしまうようだった。雫はスキルシーフで破壊のスキルを自分に戻し「他に隠してるモノなんて無いわよ」と言いながら一人、先を進み始めた。
ー非常に危険だわー
先を進む雫をロザリオは警戒して見つめる。確かに私にもシステムを破壊することはできた。問題はその魔術をどうやって手に居てたのか、だ。基本的にこの世界の魔術は敵を倒して手に入れる。ローラインさんが見せた魔術はレベル90前後なら行使してもおかしくない。その程度の敵は倒せる。でもさっきの破壊の魔術は次元が違う。seven keys world攻略に必要な鍵まで破壊すると言っていた。要するにこの世界のエリアボス以上のレベル、ということになる。その気になれば私たちのことだって……。
俺は雫を見つめるロザリオさんが気になって仕方がなかった。やはり、さっきの破壊のスキルは尋常なモノではないようだ。恐らく、雫はまだ何か重要なことを隠している。しかし、さっきの戦闘といい、雫の力は必要だ。
その先でも数体の敵が現れたが、それぞれの役割をしっかりこなせば多少のダメージは受けるものの撃退する事ができた。この調子ならエリアボスも攻略出来るかも知れない。
「多分、この先がエリアボスの部屋、だと思う。さっきも言ったけど、基本的に5人揃っている限りはこのダンジョンから出ることは出来ない。つまり、誰か一人倒されると出れることにはなる。最悪全滅は免れたいから、万が一誰かが倒されたら撤退。これは絶対だから」
ロザリオさんは全員に念押しして扉を開く。
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