第25話 ミストラルエリア
俺の元自宅に戻ってきたメンバーは今回のエリアボス攻略ログを確認しながら残りのブロンズ、ゴールドの攻略予想を立てていた。ゴールドは1パーティーではどうにもならないことが分かったので、残りの攻略組、モルフェスのメンバーも会議に加わった。
UGWのアリーシュからはこれ以上の消耗は避けたいとの申し出が入っている。可能であれば、OPWから攻略コンソールを通じてUGWに接続、UGWの攻略コンソール経由でこちらのプレーヤーも参加してもらいたい、とのことだった。この提案にロザリオさんもモルフェスさんも異議を唱えることはなかった。
「さて、どうする。同じ手法を使えば、ブロンズは多少の犠牲を覚悟すれば恐らく攻略は可能だろう。しかし、ゴールドは検討がつかん」
モルフェスは状況を確認して、発言する。そしてまずはバーチャルでエリアボスを生成して攻略テストを行う事を提案した。
「そもそも、ここの攻略コンソールだけではなく、正規の攻略コンソールも使って並列的に作戦を行うことは出来ないのでしょうか?」
俺からの提案にロザリオさんが答える。
「出来ないわね。そもそも攻略組自体が非正規なのよ。正規手続きでは攻略コンソールからの攻撃しかできないの。でもエリアボスはレベル100以上。正規の攻略コンソールは単体接続しか出来ないから単独で攻略することになるの。つまり、絶対に攻略出来ないってわけ。だから私たちは非正規にパーティーを組んで運営から隠れて攻略しているの。それで柏木くんに協力して、この攻略コンソールを作ってもらったのよ」
運営はseven keys worldを攻略させる気がない。やはりそうなのか。このOPWは監獄と雫は言っていた。自分、つまり運営を攻撃し得るプレーヤーを閉じこめておく場所。そこにいるプレーヤーが運営そのものを攻略出来るようにさせるはずがない。
「運営?」
「どうしたの新海くん?」
「運営だ。seven keys worldは運営の作り出したゲームだ。ここが監獄というならなぜ自分を攻略するトレーニングをプレーヤーにさせる?つまり、seven keys worldそのものは運営じゃない。このゲームをクリアしてもオールド・マスターにはたどり着けない!」
俺の発言にロザリオさん、モルフェスさんが食いつく。
「オールド・マスターってなんだ!この世界が監獄ってどう言うことだ!?」
雫が質問に答える。自分がオールド・マスターの娘であること、この世界は上層のOPWという監獄、下層のUGW、オールド・マスターの支配を逃れる中層があること。
「監獄というのは、オールド・マスターが危険と判断したプレーヤーを閉じこめておく場所だからそう呼ばれているわ。そこにいるハイレベルプレーヤーをUGWに落としてオールド・マスターと戦う戦力を集めているのが私たち。でも私の兄、ガルがUGWにいてオールド・マスターからの指示に従って、OPWから落としたハイレベルプレーヤーを狩っているの。だからその制約のないOPWに来てあなた達が運営と呼んでいるオールド・マスター攻略の糸口を探りに来ているの」
一通り説明を行うと皆、難しい顔になる。
「中間層、か。それに俺たちが戦うべき相手はseven keys worldではなく、そのオールド・マスターってやつなのか。冗談じゃないぜ。今まで散っていった仲間達は無意味な戦いをしてたってのかよ!」
モルフェスは当然の怒りをぶちまけた。俺は現在の状況を整理する。オールド・マスターを攻略する方法。
正攻法はUGWで支配の塔経由でオールド・マスターに直接攻撃をかける方法。だがこれは一大反攻作戦で失敗することが判明している。攻略エリアはプレーヤーのパッシブスキル、自分自身が元から保有するスキル以外はディスペルで剥がされて周囲に展開する敵に吸収されて強敵になってしまう。つまりロザリオさん達が持っているスキルも敵を倒して入手しているということなので、きっとディスペルで剥がされてしまう。
そして、もう一つの攻略方法のseven keys worldを攻略する方法。これはさっきの仮説が正しければ、これを攻略しても運営、つまりオールド・マスターにはたどり着けない。
現状、八方塞がり。
「さて。雫、どうする?seven keys worldを攻略すればオールド・マスターに到達出来るかも知れないと言い出したのは俺だが、雫も同意した。ちゃんと聞いていなかったが、なぜそう思ったんだ?」
この場で雫に一番深く関わっているのは俺だ。だから、俺は俺の責任で雫を問い正す義務を感じている。
「そうね。当初は可能性の一つだと思っていただけだったのだけれど、この前の戦闘で確信したわ。このseven keys worldを攻略すれば、オールド・マスターにたどり着ける。理由は通常攻略不可であれば、攻略組の存在そのものがブロッキングされているはずだわ。正直、無理難題な設定だと思うけど、攻略はできた。元々オールド・マスターはゲーム開発者。こっちだと運営とか呼ばれていると思うけど、父の性格的にクリアできないゲームは作らない。きっとこのseven keys worldを攻略すれば、オールド・マスターに挑戦出来ると思うわ」
雫の説明はある程度の説得力を持っていたが、後半の内容は想像に過ぎない。プレーヤーの存亡が掛かっているにも関わらず、憶測で挑むのは無謀すぎる。
「あのさ、俺。ディオールだけど、一つ確認いいかい?その鍵を集めた後にどこに行って扉?を開けばいいのか分かってるのかい?分かってるとしたら、今まで獲得した鍵を使ってみたことはあるのかい?」
UGWのブラックマスター、ディオールからそんな質問が投げかけられた。これにはモルフェスが答えた。
「ある。場所はミストラルエリア。通称風のエリアだ。そこにある塔の周囲に七つの鍵を差し込む穴がある。一度、保有している鍵を差し込んだことがあるが、なにも起きなかった。やはりすべての鍵が揃わないとダメなんだろう」
「へぇ。そう言うことかよ。その鍵穴、色分けされてたかい?」
突然、回線が切り替わりガルがコンソールに現れる。
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