第24話 おひとりさま

 夕方になるとwi-fiも調子が良くなり、いつものネットサーフィンが再開できた。

 空は藍色に染まり、いつしか雲が消え雨も上がっていた。

 外に干しっぱなしにしていた洗濯物を確認のために触ると、じっとりとした感触が残り、さすがに乾いてはいなかった。


 夕飯時になると七瀬がむっくりと起きて「腹減ったー」と言うのでお粥(梅)を温めて食べさせた。その際電子レンジも復活したみたいで、今度はレンジで温めることができた。七瀬のヤツも調子が良くなっていて、熱は僅かにあるものの、昼の時よりも回復したようだった。薬が効いたみたいだ。さすが高かっただけある。


 そして、テレビの調子も七瀬に引っ張られたみたいに良くなり、夕飯の時には普通に映るようになっていた。

 最後にダメ押しに薬と一緒に買わされた栄養ドリンクも飲ませておいた。これで明日には熱も完全に下がるだろう。


 夕飯後、七瀬とテレビをだらだら観ていた。テレビを点けているせいか、昼と違いすぐに寝ないらしい。


 とあるCMが流れた。


「ゴールデンウィークは家族や友達と!新アトラクション登場!!」


 たしかこれは近くのテーマパークのCMじゃないか?近くと言っても何駅も離れてるけど。日帰りでも十分遊べるくらいの近さではある。

 なんか久しぶりにCM見た気がするな……たしか名前は……


「スペースランドじゃん!」


 といきなり七瀬が声を出した。

 ……って、なんでお前が知ってるんだよ!!


「めっちゃ楽しかった!また行きたいなー」

「え……行ったことあるのか?」

「今度みんなで行こうよー!だめー?」

「行くって……俺と?……だめじゃないけど、俺と二人きりだぞ?楽しくないだろ……」

「いつかって、いつ行くのさ〜日にち決めないと絶対行かないよ?」

「決める!?マジで行く気なのか!?」


 なんでこんなに乗り気なんだ?そんなに好きなのか?スペースランドのことが……

 ん!?そうか!思い出した!

 昼に聞いたステアグマ星ってたしか、スペースランドのアトラクションにそんな名前が出てきたはずだ!

 もしかして、重要な場所なのか……?


 ……なら仕方ない……明日は熱が引いてない可能性もあるし、明後日も病み上がりは良くないし……3日後!


「3日後だ!明々後日!どうだ!」

「……うーん……わかった……」

 やや不服そうだが納得してくれたらしい。


 唐突にスペースランドに二人で行くことになってしまった……まぁ、ヤツが知ってる場所として手がかりになるだろうし、損はない。


 スペースランドか……実は僕は一年前まで割と良く頻繁に訪れていた。……一人で。

 遊園地を一人で訪れるヤツをバカにするなと僕は言いたい。むしろ一人の方がよりテーマパークを理解し、楽しめるとも思っている。

 一人なら乗るアトラクションで揉める心配もないし、効率よくアトラクションを周ることもできる。気に入ったアトラクションに何度も繰り返し乗っても文句は言われないし、ゲームで酷い点数を取ってもバカにされない。

 僕はお陰でスペースランドを知り尽くした一種の通になれたのだ。

 ……そりゃ確かに複数人の客を見ると虚しくなることもあったけど……


 誰かと遊園地に行くなんて初めてかもな……いや、最初に行った時は一人ではなかった。

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