第2話 ペナルティ

「圧死ぃ!?どういうことだ。どうなってる??現場には管轄の警官は向かってるのか?」


「通報が入ってからすぐに向かってます!」


同時に本庁の巨大なジャッジメントボードに「死亡」「負傷」の2カテゴリーで対象者と思われる番号と名前、緯度経度が表示されている。


「現場からの報告はまだか!」


被害者の上には冷蔵庫、テレビ等の家電製品が積み上がり圧死しているとのことだった。ほかにも土砂、中には車に押しつぶされていた被害者も居たようだ。負傷はそれの程度の軽いもの。

その他、本庁のタバコとか空き缶とか出ていた職員には表示されていたものが頭上から降ってきたとのことだった。


「圧死した被害者の周りに被害は!?」


「それが……被害者の頭上にのみ積み上がっていて、室内にいた被害者は天井部分に黒い穴のようなものが開き、そこから降ってきたようです。外にいた者は廃棄したらしきものがうず高く積み上がっていたようです。ですので周囲にいた人々への被害は確認されておりません」


マイルドなシステム、なんてどころじゃない。とんでもないシステムだ。恐らく圧死した被害者は不法投棄の実行犯なんだろう。犯罪者ではあるが処刑までするのは異常だ。


「各所報告をあげて次のルールが発布された時に即応出来るようにしておけ!あと、自衛隊にも救援要請だ!」


新城警視正は矢継ぎ早に叫ぶ。


「こんにちは。エリアスです。如何でしたでしょうか。無事持ち主にお荷物のご返却は完了したと思います。それでは次のルールを発動します。前回同様に30分後に発動します。」


【交通ルールは守らなければならない】


「以降、定期的にルールを追加するためにお邪魔することになりますが、事前にその旨をお伝えいたしますのでご準備のほどよろしくお願いいたします」


不味いな。交通ルール、全国の警官を配置しても交通ルールを完全に守らせることは出来ない。ゴミ捨てルールのことを考えるとルールを破るとハイレベルのペナルティが科せられると考えられる。官邸に非常事態宣言を発布してもらうことは可能だろうか。などと考えているうちに30分が経過しようとしている。結局、現場の警官に交通ルール違反の多い場所に配置する以外になんの対策もできなかった。


「管内での交通事故通報が多数上がってます!単独事故ばかりです!」


「内容は!」


「それが、車が見えないなにかに衝突して破損、大破したとの通報が大量に来ております。救急搬送が必要なものも出ております!」


「現場の映像を送れ!」


同時に交差点監視カメラ映像で事故の瞬間が映し出された。かなりの事故になっている。


「なんだこりゃ……。交差点で車がなにもないところに激突して大破してやがる。恐らくは右折信号が赤になったにも関わらず突っ込んだ車のようだな」


他にも一時停止線、踏切での一時停止無視で破損した事故もあったようだ。

更に事故は車にとどまらなかった。自転車に歩行者も同じように信号無視等で壁のようなものに激突して負傷した被害者が続出しているとのことだ。

報告によると交通ルール違反を犯す前にジャッジメントボードに警告が出ていたそうだ。これを無視したものが今回の被害者になったと思われる。


1つ目のゴミ捨てルール、今回の2つ目の交通ルール違反、どちらも過激だ。確かに法的な制約を守らなかった者が被害者となっているが、やり方が過激すぎる。こっちとしては傷害、殺人として捜査することになるのだろうが犯人はエリアスなる管理者になるのか?そもそもやつは実在する人物なのか?


鏑木は昔大ヒットした漫画「DEATH NOTE」が似たようなものだと思い、現象が始まった銀座付近に限定して今回のニュースを放映することを考えた。そこで何らかの反応があれば実在する人物の可能性が高まる。非人間的な存在の可能性が高いが。


結果は反応なし。

ジャッジメントボードにもなにも起きなかった。

もとよりSNSで全国的に現場映像や発生事象がアップされていたから漫画のようにはいかなかった。


「しかし、操作ったって容疑者はジャッジメントボード管理者エリアスになるんだろうが、アプローチする手段がこのジャッジメントボードしかないんじゃお手上げだよな。こちらからの呼びかけに応じるとは思えないし。そもそも意思疎通できるのか怪しい。そもそもなんで設定されるルールが犯罪度数が高くないものなんだ。その割にやり方が非常に過激だ。犯罪度数が高くなるとどのようなペナルティとなるのか対策もしておかないとな……。まずは2つのルールについて全国に厳重な注意を呼びかけるしかないか」


「おーい、横ちゃーん、報道集まってる?」


「だから……もういいですけど、集まってます。会見始めますか」


会見では様々な質問が出たが現状内容を話す以外はやりようがなかった。むしろ報道側に新しい情報はないか聞く始末だったが、報道側も同じような情報しか持っていなかった。

ただ、ごみ捨てルールは新たにルールを破った廃棄を行おうとしてもできないはずだ。新たな被害者は出ないだろう。その時だった。


「鏑木さん!鏑木さん!県警からの報告です!新たに廃棄ルール違反者の被害が発生しました!」


「なんだって!?」


そう言って鏑木は対策本部に戻って状況を確認す


「今度の状況はぁっ!」


「本庁のジャッジメントボードに追加死亡者の情報が出たので現場に警官を急行させたところ、山中で冷蔵庫を頭上に受けて死亡したものと思われるとのことです。付近には廃棄物を積んだトラックが駐車してあり、恐らくは不法投棄した直後に被害にあったと思われます」


あのとき、紙飛行機は手から離れなかった。軽かったからか?違う。何かを見落としている。警告表示が出て手から離れなかった。あのとき、強引に捨てようとしたらどうなっていた?


鏑木警視は近くにあった書類を丸めて床に投げ捨てようとした。手から離れない。そして警告表示だ。付近のゴミ箱の位置も示している。その警告を無視してさらに強引に捨てようとする


「鏑木先輩、何してるんですか!ペナルティが発生したらどうするんですか!」


「いや、横井くん。ペナルティったってこの紙くずが頭に降ってくるだけだろうから、、よっ!痛っ!」


床に思い切り投げ捨ててみると手から離れた丸めた書類は床に激突する前に消え、頭上からぶつけられた。


そういうことか。警告を無視してルールを破ると即時ペナルティが与えられるのか。これは危険だ。


「おい!マスコミとSNSにこのことを緊急で発信しろ!非常に危険だ!警告表示は決して破るな!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る