第40話 旅行の計画
しかし、女子校の文化祭ってすごいな。チケット制だし。男の人はほとんど彼氏とか兄妹とかなのかな。開催期間中、俺は巡回役になったわけだけど。実行委員の腕章を見て噂の交換実行委員の人、とか行く先々で言われるし、なんか有名人になった気分だ。男装カフェなるとことで、無理やり西京女学院の制服を着せられて女装人員にされたり。意外と人気が出てしまって楽しくなってしまったり。
未来『先輩なにやってるんですか』
その所業は即座に未来ちゃんネットワークに共有されて全校生徒に知れ渡ったり。雪だるま式に有名人になってしまった。そして、正式に出演依頼の合ったコスプレ喫茶。用意された中世貴族の衣装に着替えてて……。
「あの。更衣室って」
「ここですよ?」
「皆さん、ここにおられたり?」
「着付け、ありますから」
皆様が居ります場所で着替えて下さい、ということのようですね。非常にマズイですね。向こうでは着替え始めたし。すぐに後ろを向いたけど。女の子だらけだとそういうのに鈍感になるのだろうか。自分もさっさと着替えたほうが良さそうだ、とエイヤでズボンを脱いて着替えていたら、後ろでキャーキャー言ってるし。絶対にわざとだろ。しかし、このようなことに負けていたらこの先に待つのは敗北!
「い、いらっしゃいませお嬢様」
「きゃー!本当にいたー!」
流石の目玉企画。俺、大人気。ハーレムってどころじゃねぇぞ。ご指名入りまくりだし。
「ちょっとちょっと、桐生さん」
バックヤードに呼ばれて言ってみるとそこにはきらびやかなドレスが。嫌な予感し感しかしない。
「次はコレです!」
あーん。やっぱりそうなるんだ。もうどうにでもなれ。どうとでもしてくれ……。ガッツリ脱がされて胸に詰め物までされて衣装を着る。メイクまでされた。かつらも被せられた。女装童貞をさっき捨てたと思ったら、もっとハイレベルなものが待っていた。
「さ!完成です!記念撮影!」
バックヤードの生徒が周りに集まって一枚。
未来『先輩なにやってるんですか』
すかさず未来ちゃんからメッセージ。女子校、情報ネットワーク高速すぎるでしょ。
ホールに戻ると、もはや珍獣扱いである。自撮り以来の雨あられ。顔がひっつきそうになる。あの、一応、男なんですけど……。胸を揉まれてやわらか~いとか言われるし。普通にセクハラというのでは?
未来『先輩さっきからなにやってるんですか。巡回してくださいよ』
いや、したいのよ?しごとしたいのよ?でも離してくれないの!(すごく楽しいから行きたくないの!)
結局、交換実行委員と涼子ちゃん、未来ちゃんがやってきて連れ去られたわけだけど。記念撮影はきっちりされたけど。
「はぁ、道彦にそんな女装趣味があったなんてね。今度私の制服でも着る?」
安西が少しご立腹。七海ちゃんは回ってきた写真を見て爆笑している。涼子ちゃんは呆れ気味。
楓『○ね』
あいつ、来てたのかよ。帰ってから大変そうだ。
問題の演劇も無事に終わって、文化祭も後夜祭に突入。西京女学院の後夜祭はフォークダンスだった。相手がくるくる回るやつ。なんだこのカップル製造機は。実行委員は普段管理する側なのだが、自分だけその環に放り込まれた。なんでだ。しかもなんで女装なんだ。生徒にはキャーキャー言われたが、外部からのお客さんからは奇異の目で見られるし、男が相手の時は驚かれるし。最後はその姿で各団体と記念撮影になるし。あれ、アルバムとかに残らないだろうな。
「はぁ……疲れた。疲れすぎた。なんなんだアレは。学校から報酬出たりしないのかよ」
「おにーちゃんはこれが報酬でしょ。デレデレしちゃって気持ち悪い」
楓が今日の俺の活躍をスマホで見せてくれた。確かにデレデレしている。人生で最高にモテている。
「楓。それ、送ってくれ」
「キモ……」
そんなことを言っていた楓だが、後でちゃんと送ってくれた。コレは一生の宝ものにしよう。
あかね『それで。例の件だけど、どうするの?』
あ、こいつ、"安西"から"あかね"に変更しやがった。
桐生『例の件?』
翌日の夜に安西からのメッセージ。
あかね『4人で遊びに行くって話』
あ。すっかり忘れてた。そんな約束をしていたような。
桐生『どこに行くんだ?』
あかね『その前に七海ちゃんと涼子ちゃんを"桐生くんが"誘うんでしょ。私からにしたら、私しか参加しないイベントになるわよ』
そうだった。そんな事も言っていた。だったら最初から個別じゃなくてグループで送ってこいよ……。
桐生『突然なんですが。4人で遊びに行きませんか?』
七海『行きたいです!』
涼子『はい!』
あかね『当然です』
千石さんまで"涼子"に変わってる。断固名前で呼べってことなんだろうな。
桐生『で、どこに行くのかは決めてません。希望はありますか?』
七海『はい!チケットがあります!』
桐生『なんの?』
七海『宿泊チケットです!なんとちょうど4人分!』
涼子『宿泊って……』
あかね『婚前旅行ですね』
桐生『婚前って……。ところでどこのチケットなの?』
七海『箱根です。お爺ちゃんたちの慰労会で行く予定だったらしんだけど、体調を崩していけなくなった人がいて』
まぁ、箱根は近くて行きやすいけど、こんなメンバーで、しかもお泊りってどうなんだ。
桐生『お泊りってハードル高くないか。両親の許可的に』
七海『私はもう許可取ってます』
チケットもってるしな。俺が一緒って言ってるか分かんないけど。安西はうちの両親共々交流があるから許可が出るような気がしないではないけど。涼子ちゃんはどうなんだろうか。女子校の生徒会長が男子とお泊り。
桐生『千石さんは大丈夫なの?』
涼子『あの。涼子、でお願いしたいのですが。そうですね。難しいかもしれませんが、桐生さんを両親に紹介すれば大丈夫かと思います』
いちばんハードルが高かった。
桐生『それ、必要なの?』
涼子『私だけ仲間はずれになるんですか?』
うぅっ……そう言われると弱いな。
七海『それじゃ、みんなで行きましょう』
結局、そんなわけになったんだけど。彼氏でもないのに涼子ちゃんの両親に挨拶とか。そんな流れってあるのか。親の話だから母さんに聞いてみたら、全員の親御さんに挨拶に行ってきなさい、とか言われるし。でも。平等になるからそれが一番いいかも知れない。当然、その話を聞いていた楓には恒例の「○ね」をいただきました。
「あら。一緒に旅行?いいわよ。他のお友達も一緒なんでしょ」
安西家、あっさりOK。まぁ、これは予想がついていた。続いて七海ちゃん。
「もう一度、泊まってるじゃない。行ってらっしゃい」
そうだった。住み込みでバイトしてたんだった。
「ああ、あなた達が涼子からよく話を聞くお友達ですか。スイーツ研究会の皆さんでしたっけ?男子は桐生さんお一人なんですか?」
「はい」
「あら。あなた、どうします?」
「他の親御さんはなんて?」
「了解を頂いております」
「桐生くんなら大丈夫だよ、お父さん。ほら、この前の学園祭でも交換実行委員で来てくれていたような人だから」
「そうか。学校お墨付きなら問題ないな。楽しんできなさい」
一番会話があったものの涼子ちゃんの家もOK。というわけで後に引けなくなりました。まさか宿泊だとは思っていなかったので、心の準備が整いません。困った。Webで調べてもカップルの記事しか出てこないし。ハーレム旅行って知れべたらオランダのハーレムの情報しか出てこないし。
「なぁ、楓」
「○ね」
「そんな事言わずにさ」
「10回○ね」
ダメだったやっぱり自分で考えるか……。こういう時は平等にしつつ、目的の一番気が合うのは誰だ、を探すというか感じるというか。しかし、気が合うってどういうことなんだろな。話しやすいとか?スキンシップしやすいとか?よく分からんな。そうだ、稲嶺と笹森に相談してみよう。
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