第21話 西京女子学院
「で?どうだったんだ?中間試験の結果は」
中間試験が終わって、解答も返却され。赤点者がいないかの報告会。幸いにして、今回は七海ちゃんが数学で赤点を取った以外はなんとかなった。奉仕活動は免れたわけだ。そもそも部員の半分が赤点って、そんな部活は存在するのだろうか。ウチの部活みたいに4人だけとかなら分かるけど。野球部とかサッカー部の半分が赤点ってそんなことあったら逆に事件でしょ。
「で。俺達はなんでこんなところに集められてるんですか」
「すまんな。人数が足りなくてな」
「人数って、ここに居るの、先生と俺たちだけじゃないですか」
「そりゃ、みんな部活で忙しいからな」
「俺達も部活なんですけど」
「お前たちは、なにか大会とかがあるわけじゃないだろ?1日くらい活動しなくても問題ないだろ」
まったくひどいものだ。結局、赤点を半分以上取った部活なんて無くて、人数の一番少ないスイーツ研究会にやり玉が挙がったわけだ。というわけで、校門間にジャージとトングをもって集合している。
「それじゃ、行くぞ」
「どこにですか?」
「閂公園」
「は?」
閂公園って学校の近くの?結構広くね?あそこを掃除するの?マジで?今から?
「あー!だりぃー!なんでこんなことをしなけりゃいけないんだよ」
「部長が人数集められなかったからじゃないですか?そもそも私が参加しなかったら創部もできなかったわけですし」
最近は七海ちゃんにさえもやられている。男一人の部活、ハーレムだって思ってたのに。
「ねぇ、あっちにいるジャージの集団も同じような奉仕活動というゴミ拾いをしている生徒なのかしら。色が違うから別の高校だと思うけど」
安西が見つけてみんなに話しかけた。確かに見たことのないジャージだ。
「せっかくだから、声をかけてみるか。同じ人数みたいだし。よし、稲嶺、頼んだ。一番近くに居るだろ」
ちょっと離れた場所のゴミを拾っていた稲嶺に頼んで聞いてきてもらったら、向こうの全員が稲嶺についてきた。
「初めまして。私達、西京女子学院の生徒会のメンバーです。私は生徒会長の千石涼子せんごくりょうこ、隣にいるのが副会長の笹森ともえ(ささもり)、こっちが書紀の梅津詩乃うめづしのに、会計の星野未来ほしのみらいです。たまにこうして公園の掃除をしています。今日は手伝ってくれる高校があるって聞いていたのだけれど、あなた達だったのね。ありがとう」
「あ、いえ。こちらこそ。俺はスイーツ研究会の部長、桐生道彦といいます、こっちが安西あかねに伊藤七海、そっちに行ったのが稲嶺千佳。よろしくお願いします」
「スイーツ研究会ですか?」
「はい。色々なお店の同じようなメニューを食べ比べて違いを評論する活動をしております」
「楽しそうな活動ですね。更にこのような奉仕活動までなさるなんて、素敵な研究会ですね」
「あ、いや。そんな」
罰ゲーム的な感じでやっているなんて言い出せない雰囲気である。
「そうなんですか。生徒会、なんて憧れちゃいます。そうだ、お近づきの印に私達が一番のお気に入りケーキ店へ、この後行きませんか?」
なんという外面。安西の、この行かないという選択肢を与えない雰囲気、ある意味すごい。
「そうですか。スイーツ研究会のお勧めのお店なんて楽しみです。是非ご一緒させてください」
断れなかったのか、本当に行きたいのか。わからないけど、俺もあそこのシュークリームは好きだから別に問題はない。あるとすれば、女の子7人に対して男は俺1人になることだろうか。不安的な意味で。
それにしても公園にはなんでこんなにゴミが棄てられているのか。タバコの吸殻から空き缶、えっちな雑誌とか落ちていて拾った俺に軽蔑の視線を向けられるし。集積場所には放課後の90分ほどで結構なゴミが集まっていた。
「こんなところでしょうか」
「あの。コレってここに置きっぱなしでいいんですか?」
「はい。ここが集積場所になってますので、公園管理者の方々が回収して下さいます」
女子高校の生徒会長ってこんなに丁寧な物腰じゃないと成れないのかな。うちの女子連中とは雲泥の差だ。
「はい。ここです」
西京女子学院の生徒会メンバーの第一印象は良好。いつもは奥の席だけど、今日は8人なので2人がけテーブルを引っ付けて着席。俺は当然のように端っこの席に陣取った。流石に真ん中に入る勇気はない。
「ここのお勧めはシュークリーム。これを食べずにしてこのお店は語れないの!」
安西はいつもあのシュークリームを勧めるようだ。まぁ、確かに美味しいけど。俺はモンブラン。このお店で一番美味しいと思っている。
「確かに美味しい。こんな住宅街にケーキ屋さんがあったなんて」
テンプレートのような喜び方は他人行儀を感じるけど、まあ初対面って本当はあんな感じだよな。安西がフレンドリー過ぎるんだ。本性はあんなのじゃないのに。
「ところで、スイーツ研究会の皆さんはいつも奉仕活動をされているのですか?」
まあ、当然の質問だよね。安西はなんて応えるのかな?なんて思っていたら、それは部長から、なんて無茶ぶりを食らった。
「あ、いや、この部活、5月15日に設立されたばかりなんですよ。ですから3年生もいません。こっちの七海が1年生でほかは2年生です」
上手く切り抜けた気がする。次回はいつですか?って聞かれたら知らないけど。
「そうだったんですか。私達も1年生と2年生です。うちの高校は3年生は受験に集中ということで、生徒会には3年生はいなくて」
受験に集中……。考えただけでも頭が痛い。俺も来年には受験なんだよな。やだなぁ……。
「そういえば、今週末に、このメンバーで遊びに行くのですが、一緒にいかがですか?」
え?まじで?全く聞いていないんですけど?稲嶺と七海ちゃんを見るけど、2人とも聞いていないという顔をしている。例の練習とかいうやつだろうか。だったら誘わなくても……。しかもなんか断りにくそうな空気で話しているし。
「どうします?ともえちゃん」
「私は予定もないですし大丈夫ですよ?詩乃ちゃんと未来ちゃんは?」
「大丈夫です」
あ、大丈夫なんだ。このままだと、この場でどこに行くのかまで決まりそうだ。もう付いて行くしか無いし安西に任せよう。
「それではこの人数ですし、ディズニーランドに行きましょう」
この人数ですし、の意味が分からない。それに初対面でディズニーランドってハードルが高すぎる。アトラクション待機時間に何を話すのか。初対面で話題を維持するってハイスキルだぞ。
「ええと……」
ほら、困ってるじゃないか。
「実はチケットがあるのです。7枚」
だからこの人数ですし、なのか。しかし。枚数は7枚。ここに居るのは?8人。まさかとは思うけど?
「どうですか?」
さすが逃がさない女、安西、チケットまで用意されて「遠慮します」は言いにくい。
「それじゃあ、お言葉に甘えて……」
あー、落ちた。女の子も落とすのが上手いんだな。でもまぁ、7枚ってことは俺はお留守番かな。女の子で遊びに行くディズニーランド、楽しそうじゃないか。一応、帰り道で確認してみようか。
「なぁ、安西、さっきのチケット7枚ってことは、俺は留守番で良いんだよな?」
「なんで?」
「なんでって。チケット無いし」
なんでコンビニ指差してるんだよ。
「売ってるよ?ここで」
まぁ、売っているでしょうよ。
「その、俺だけ買えってことでしょうか?安西さん?」
「だって行きたくないの?ディズニーランド」
いや、行きたいけど。しかも俺以外女の子なんでしょ?天国じゃん。
「ってか、むしろ行っていいの?男、俺だけになるけど」
「いいんじゃない?別に。話の種に困ったら任せるから」
ああ、そういう。俺は便利屋じゃないぞ。
結局、コンビニでチケットを買って、この前の和菓子屋バイトの戦利金は底をついたわけで。遊園地のチケット7,400円って高くないか?普通の遊園地って半額くらいでしょ。
家に帰ってから楓がリビングでウダウダしていたのでちょっと聞いてみる。役に立つのか分からないけど。
「なぁ、楓。女の子との話題に詰まったら、何を話せばいいんだ?」
「は?話す相手も居ないのに何言ってんの?もう振られたんでしょ?」
「あ、いやな。今週の土曜日にディズニーランドに行くんだよ」
「なに?復縁したの?」
「まぁ、あいつも来るんだけど、他に部活の同級生と後輩、あと、西京女学院ってあるだろ?あそこ生徒会の4人で」
「は?」
「というわけなんだよ。でさ、西京女子学院の人たちって出会ったばかりでさ。話題に困りそうなんだよね」
「ちょっと。私の算数が間違えてなければ、男はお兄ちゃん1人に女の子7人?マジで?」
「マジで。だから聞いてるんだってば」
「なんか許せないんですけど。なんでお兄ちゃんばっかり」
「知らんよ。成り行きでそうなってさ」
「最近までぼっちだったのに!」
「だから知らんってば」
「まぁ、話に困ったら服装の事とか、なんか色々あるでしょ」
服装の話、しか出てないな?こいつも俺の妹だけあって話題のバリエーションが少ないな?
「まあいいや。参考になったよ。たぶん」
なんか噛み付く感じの視線を感じたけど、無視してそのまま自室に行ってWebでディズニーランドについて調べたわけだけど。ディズニーランドなんて小さい時に行ったような記憶があるような無いような。つまりほとんど覚えていない。ファストパスとか一応一通りの情報を手に入れてディズニーハーレムランドの準備を整えた。
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