第10話 スイーツ研究会
「あぁっと……やっと週末だ。というよりゴールデンウィークだ」
最高にゴロゴロ……今年は出来なそうだ。例の件が今日からあるしな。それにしてもスイーツを食べる部活ってなにを発表するんだ?レシピ?食べ歩きマップ?評論?分からんが今日集まってソレを考えるんだろうな。
「おあよ……」
眠たい、最高に眠たい。いつもの土曜日はまだ寝ている時間だ。なので起きてた俺を見て母さんも楓もびっくりしている。
「あら。今日は早いのね。朝ごはん作るからちょっと待ってて」
「あ、いいよ。自分でやる」
どうせ遅くていつも自分で作ってるんだ。何も変わらないさ。トーストと卵焼き、ベーコンを焼いてトーストにサンドしてマスタードとケチャップをかける。これがなかなか美味しいのだ。ベーコンの変わりにソーセージにしても美味しい。でも一番はベーコンだ。ブロックベーコンを買ってきて豪快に分厚いやつで作ると最高だ。
「おにーちゃん、それ、好きだよね」
楓は昨日のことがあったので、なにか変な感じになるかと思ったけど、特段の変化はない。俺も普段どおりにしてなかったことにしよう。
「これ、美味しいんだぞ。なお、カロリーは気にするな」
「やっぱり。いやよそんなの」
「食わないと成長しないぞ」
「この……!牛乳飲んでますぅ」
本当に牛乳って効くのだろうか。今日にでも安西に聞いてみるか?エッチ、とか言われそうだけど。可愛い妹のためなら……。やめとこ。
食事を終えて歯磨きをしていたら、楓がやってきて、昨日のことについて再度のお詫びをしてきた。本当に気にしているようだ。俺は正直に何も思ってないから、と答えたら「私に魅力がないってことかしら!?」とか怒られたので、気持ち的には大丈夫なんだろう。いつもの楓だ。
一番近い人は遅刻をする。ご多分に漏れず、集合時間を過ぎてしまっている。悪いのは漫画だ。面白いところだったんだ。
「スマン遅れた」
「徒歩10歩のどこに遅れる要素があるのよ」
「だからスマンって」
案の定、稲嶺に怒られた。
「さて。今日は新設部活で何をするのか、ということを決めるわけですが。昨日、訳あって私の部屋に桐生くんと七海ちゃんが居たので、一つの案が生まれました」
「え?そうなの?私何も聞いてないよ?」
稲嶺の当然の反応。ってか、安西、連絡していなかったのかよ。
「そうなんです。では発表します。新しく新設される部活動は『スイーツ探究会』です!」
新しく新設、って頭痛が痛い、みたいなものだけど。、まぁいっか。もっともらしく「おお~」という反応を返す。これはみんな慣れてきたのか諦めの声、な気がする。
「スイーツ探究会ってなにするの?」
「その名の通り、スイーツを探求します。美味しいお店、美味しいメニュー、レシピを研究して自分たちで作る!で、それを学祭で発表するの!ほら、これなら目的があるから大丈夫でしょ!?」
思っていたよりまともなものが出てきたな。究極の美食を探求する某漫画のようだ。
「さぁ、異議がある人はいるかしら!?千佳!桐生くん!七海ちゃん!」
これって決定事項なんだよな?そんな顔でみんなを見回す。
「異議なしを認めるわよ。それじゃ、スイーツ探究会発足を祝ってなんか食べに行きましょう!」
もう発足するんだ。許可も貰っていないのに。ってか、今日はどこに行くんだ?
「今日はここ!」
今日は庶民的だ。ここなら俺も入りやすい。値段もこなれているし。電子マネーだって使えちゃう。それにここはイートインスペースがある。すべてが揃っている。
「コンビニだな」
「そう!コンビニ!スイーツの基本はコンビニなの!大量生産される同じ味!マーケティングに基づいて生産される流行りのラインナップ!長期人気商品のハズレのなさ!基本的にコンビニスイーツがすべてのスイーツの基本なの。だからここから始めるのよ」
もっともらしい意見。ってか筋が通っててなかなか。真面目に考えいるのかな。あと、コンビニってどこのコンビニとかあるのかな。
「教授、一つ質問よろしいでしょうか?」
「何かね桐生くん」
「コンビニってたくさんあるけど、どこを基準にするんですか?」
「よくぞ聞いてくれた。この店はプリンだ。オリジナル商品がある。他のコンビニでは売っていない。それを食べるのだ。そして他のコンビニのプリンも食べる。違いを研究する!今日はプリンだ!」
何なのこの気合。それに何件も回るって何個プリン食べることになるの。そんなことを行っていたら、安西がレジに並んでいる。俺たちも一つ手にとって並ぼうとしたら、必要ない、と言われて棚の戻した。
「一人一つ食べてたらお腹いっぱいになっちゃうでしょ?分けて食べるのよ。だから、あとで100円ショップに行って小分けする小皿も買うわよ」
なんだこの用意周到な計画は。それなら確かにお腹いっぱいにならないし食べ比べも出来る。
僕たちは4大コンビニを回って目的のプリンを手に入れた。
「なんか一つ、プリンじゃないのが混ざってない?どっちかと言うとどら焼きのような……」
「いいの。美味しそうだったから!」
安西の独断と偏見で決まる研究会のようだ。でも他のやつはプレーンなプリンだ。安西が買ってきたプリンとなんかどら焼きみたいなものを小皿に取り分ける。そしていざ食べ比べ。
「これは……!」
「なにこれ、ぜんぜん違う」
「本当ですね。違います。このプリン、好みです」
なかなかどうして面白。お店によって全然味が違う。舌触りも違う。いつも気にしたことが無かった。ってか、比べるようなことしないし。
「さて。ここからが本番よ。ここにノートがあります。今の内容をきっちり書いて、本日のプリンについてまとめます。そして私がWebにアップします。ホームページ、昨日作ったから」
本当に本気のようだ。部長は安西のほうがいいのでは。でもこれならしっかり目的もあるし、許可が出る可能性は高い。こうしてプレ活動したものを見せれば尚更だ。
「それにしてもすごい気合の入れようだな」
「だって。スイーツ食べたいじゃない?それにうまく行けば部費だって出るんでしょ?学校のお金でスイーツ!最高じゃない」
少々動機が不純だけど、目的を持って活動するのならありなのかも知れない。ぼっちもいいけど、こういうのも良いのかも知れないな。
「それでは。今後の予定。特にゴールデンウィークの予定がなにも決まってません。なので、今決めます」
まて。それはなにも聞いてないぞ。なんだゴールデンウィークの予定って。俺のワンダフルなゴロゴロウィークはどうなるっていうんだ?
「あの、そのゴールデンウィークの予定って必ず参加しなければ駄目なのでしょうか?」
「そんなこと考えてないけど、何かあるの?別に真面目に活動って言うよりむしろ遊びに行こうと思ってるんだけども」
「えと……根本的な問題というか。お店のお手伝いをしなければならなくて……」
なるほど。あの豪邸はお店屋さん……、には見えなかったけどな。
「七海ちゃん、ちなみに何屋さんなの?」
「和菓子屋です。あの家の反対側がお店になってまして」
ああ、これは嫌な予感がするぞ。稲嶺、止めろ。頼む。自分では無理と判断して稲嶺にボールを投げた。
「あかね。あんたまさか手伝う、なんて言わないでしょうね。素人がそんなところに行っても迷惑になるだけよ?」
「大丈夫!雑用とかなら出来る!」
稲嶺、大丈夫か。心は折れていないか。ちょっとガックリ来ていたので心配になってしまった。当の七海ちゃんも少々困り気味だ。
「でも、聞いてみないと……」
デスヨネー。最低限、それはしないとですよね。そんなわけで一行は伊東家へ足を向けたわけだけど。
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