第15話 季節の変わり目
また季節が変わる。
今年の秋は遅れてやってきた。だってもう10月じゃん。遅いよ。
私が1番好きな季節は秋だ。
からりと晴れ渡る空の下、枯れ始めた草の上に座って、冷たそうな水の流れを横目にぼんやり考え事をする。そんな素敵なことができちゃう。
…近所に川がある。
けど座れそうな場所は見つけてない。
だから私、この秋に、チャリで川沿いを走るつもりでいる。
誰も来ないような静かな場所を見つけたら、リュックサックに色々詰め込んで時折訪れてもいいと思うんだけど、どうかな。
冬までの短い期間、しかも晴れの日だけ。
そのうえ、私はもしかしなくてもここを離れるつもりでいる。
今だけの、ひみつの場所。
なんて甘美な響き!
お気に入りののど飴をたくさん持っていこう。飲み物も持っていこう。
頭が空っぽになったとき少しだけ勉強するための単語帳なんてあってもいいかもしれないね。きっとするする入ってくるだろう。
メモも欲しいな、思いついたことを書き出せるように。そうなると色鉛筆とシャーペンなんてあると楽しそう。
絆創膏と余ってる消毒液も持っていこうかな。何かの役に立つかもしれないから。
ああ、そんなとこ、何時間でも居れてしまいそう。
子供の頃あんなに夢に見てた秘密基地みたいだ。誰も来ない自分だけの場所。完璧だ!
閉鎖的な現代の、コンクリートの積み木の森をたったひとり飛び出して、壮大な空の下、雄大な大地に腰掛けて、壮麗な水を眺める。
なんて、なんて素敵な休日なんだろう!
…そんな休日を夢見ながら、ここ数日を生きていた。
実行できてない理由はたった一つだ。
怠い。
心身ともに怠い。
季節の変わり目はいつもこう。
春から夏、夏から秋、秋から冬、冬から春。
すばらしいくらいコンプリート。くそったれだ。
風邪を引くわけではない。
ただただ怠い。とにかくそれだけ。
熱も出なければ咳も出ないし、まあ花粉とかホコリとかでくしゃみは出るけど、それくらいなんだよね。
…けど今はなんかこう、喉がね、違和感ある。風邪ひいたかもしれない。何年ぶりだろう。
どうせなら熱出したい。この微妙な感じだと休めないんだもん。
長引くんだよね、これ。下手したら2週間治らん。いつだったか喉やったときに経験してる。あれは酷かった。
熱出たら大手を振って休めるじゃん。その分治りも早いのよ。2日くれれば完全に治る。
休ませてください。
無理ですか。
分かってました。
寝ます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます