幼なじみだから
子供の頃から巴のことが好きだった。
それは、大人になった今でも変わらない。
巴の趣味につきあっているのは、彼のことが好きだから…である。
だけど…巴は、私のことを幼なじみとしか思っていない。
あれは5年…いや、4年前だったかも知れない。
巴と一緒に飲みに行った時のことだった。
美味しいものを食べて、美味しいお酒を飲んで、他愛もない話をしたりと、巴と一緒に楽しんでいた。
「俺、めありのことが好きだわ」
何杯目かのビールを飲んでほろ酔い状態の巴がそんなことを言った。
「…えっ?」
私は耳を疑った。
巴が私のことを好きって言った…?
何と言うことでしょう!
どこかの番組のナレーションみたいに私は心の中で叫んだ。
「巴、それって…」
「だって、俺の趣味につきあってくれるのはめありだけじゃん」
私の質問をさえぎるように、巴が言った。
「あー、うん…」
確かに、コスプレが趣味と言うのはちょっとないかもな…。
心の中で呟きながら、私は首を縦に振ってうなずいた。
「これが他の女だったら間違いなくドン引かれるよー。
いい年齢した大人が何をやってんだって言う目で見られるよねー?」
巴はアハハと笑った。
「そ、そんなことはないと思うよ。
世間もそう言うのに関して優しくなっていると思うし、『世界コスプレサミット』なんて言うお祭りが名古屋でもあるくらいだし…むしろ、コスプレは文化だと言っても過言じゃない?」
そう言った私に、
「でも、お祭り以外でコスプレをする人なんていないでしょ?」
巴が言い返したので、私は何も言えなかった。
「めありだけだよ、俺の趣味につきあってくれるのは」
「それは…」
巴のことが好きだから。
「幼なじみとしてつきあっているだけでも嬉しいよ」
「――ッ…」
私は何も言うことができなかった。
違うよ、私は巴のことを幼なじみだなんて1回も思ったことないよ。
私は幼なじみじゃなくて、男として、本当に巴のことが好きなんだよ。
なのに、
「めありが幼なじみでよかった」
巴はそう言ってビールに口をつけた。
私のことはただの幼なじみだって、思っているんだ…。
女としての好きじゃなくて、幼なじみとしての好きなんだ…。
「めあり、どうしたの?」
私の様子に気づいた巴が聞いてきた。
「あー、ちょっと気持ち悪くなってきたかも…」
そう答えた私に、
「えっ、大丈夫?」
巴は慌てたようだった。
「トイレに行く?
お冷を頼んだ方がいい?」
私のことを心配して聞いてきた巴に、
「そんなにひどくないから…」
私は首を横に振って答えた。
巴は私のことをただの幼なじみだと思ってる。
そんな巴に向かって、私は自分の気持ちを告白できなかった。
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