第25話 深夜の密会・2

午前零時です。


「深夜の学園って、何か怖いね」

「懐中電灯を持って率先してるから、あまり団三の台詞に実感がわかないわね」


バカップルが深夜の学園を徘徊します。


「とにかく、研究室よ」

「失礼しまーす」


ガラリと、思いきり研究室の扉を明ける団三。彼らの前に待ち受けるのはー


「・・・誰もいないね?」

「華恋お姉さんが隠れてそうだけど、本当に誰もいないのかしら?ちょっと待っててね」


陽華はスマホを取り出し、あらかじめ用意していた音声を再生させます。


「ちょっと団三、二人きりだからっていきなりはまずいわ」

「フムフム、何がまずいんだい?」

「深夜の密会が二人きりじゃない件について」

「あ、ボクが隠れてるのバレたか!さっきのは再生された音声か。こりゃ一本とられたなぁ。さすがは、ボクの妹!」

「おだてても遅いわよ。どうせ二人きりでイチャイチャしているところを邪魔するつもりだったんでしょ?」

「その通りです、はい」


「ビッグシスター先輩の真似」


団三がパンパンと手を叩きます。


「とにかく、3人で『ブリッツ・ギア』を探しましょう」


「「はい」」


密月姉妹の台詞が重なりました。


「それにしても、1時間だけという妙な指定は何の理由があるのかしら?」

「ボクが当直なのと、事前に調べた結果、この1時間だけにしか開かない部屋、というか仕掛けがあるのに気づいたんだ」

「で、そこが怪しいと」

「うん。ボクの前の世代までは『ブリッツ・ライン』をやってたらしいんだけど、その先輩による置き土産というか、遺産がそこにあり得そうなんだ。」


華恋はラジコンの機械のようなもので、研究室の一画の隠し部屋を開けました。


「ここ?」

「うん。時間指定の上、人数が複数必要なんだ。そういう仕掛けなんだ」

「ひとりだと届かないのね?」

「そうなんだ。それで今回、バカップルを呼んだわけだ。と言っても、3人で同時にボタンを押せばいいだけなんだけどね」

「イチャイチャを期待していた読者には申し訳ないわね」

「美少女姉妹との深夜の密会、これもイチャイチャだよ」

「うれしいこと言ってくれるわね。・・・遊びの時間は終了よ。さっさとボタンを押しましょう」

「ウチはイチャつき足りひん」

「ビッグシスター先輩、千野先輩の真似をしないでください。ビックリシスター先輩に改名しますよ?」

「私的には、公太郎先輩のネーミングセンスがツボに入るわね」

「あ、ネーミングセンスになると脱線しそうなので、本題に戻ろう」


3人はそれぞれ、所定の位置につきました。


「みんな、準備いい!?」

「はーい」

「オッケーでーす」


「それじゃ押すわよ!押すわよ?本当に押して大丈夫ね??」

「そんな『押すなよ』みたいなフリはいらないでーす」

「じゃあ、押しましょう。ポチッとな!」


ゴゴゴゴ・・・・という音と共に、床の一部が盛り上がってきました。


「これが『ブリッツ・ギア』」


華恋がゴクリと息を飲みます。彼女が待望していた『ブリッツ・ライン』のマシン開発で役立つ部品が、あっさり手に入ったのです。


『ブリッツ・ギア』は宝石箱のような箱の中に丁寧に置いてありました。


「ひゃっほーい!これでマシン開発が捗るぞぉ」


華恋が狂喜乱舞します。文字通り、跳び跳ねて喜んでいます。


「ミッション・コンプリート」

「良かったわね、団三」


団三と陽華は視線を交わして頷きあいました。こうして、深夜の密会は終了しました。

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