第19話 剣道部との邂逅

今日は、かりきゅー部と剣道部の顔合わせの日です。


「と言っても、部長のワシだけじゃがな。部員は秘密特訓ナウじゃ」


剣道部部長・藤多夕(ふじ・たゆう)。女みたいな名前(?)ですが、坊主頭のれっきとした男です。


「藤先輩はウィザードクラスでしたよね?」

「いかにも。ワシはウィザードクラス。体力面だとマジシャンクラスといったところかのぉ」

「剣道部がランク2ってことは、マジシャンクラスが中心?」


陽華がもっともな疑問をぶつけます。


「うむ。今回の『ブリッツ・ライン』参加メンバーは2年生のマジシャンクラス3人、1年生のスポンサークラス2人の予定じゃ」

「藤先輩はオブサーバー(指揮)ですか?」

「その通り。ワシは指揮官じゃ。リザーブは、そちらに合わせてなしでいこうと思うのじゃが」

「いえ、手加減はなしでお願いします」

「人数不足はこちらの不手際です。むしろ、剣道部が負けたときの言い訳にならないように全力できてください」


華恋、陽華による挑発です。この発言を受けて、剣道部部長は鼻息を荒く言います。


「よく言った。では、ワシ自ら参戦するとしよう。仕様はこのままじゃな。次期部長をオブサーバーに据える。ここまで手の内を見せるのも、かりきゅー部のハンデに応えるためゆえ。そちらには、悪魔の頭脳の持ち主がおるからのぉ。くわばらくわばら」


剣道部部長は脇腹を揺すりながら退散しました。


「喰えない男どすなぁ」

「了、剣道部の実力、わかる範囲でどんな感じ?」

「藤先輩は、魔術演算なしの普通の近畿大会で5位の実力だよ。ギリギリ全国大会に出場できないレベルの実力者だよ」

「頭脳の方は、よくわからん感じやねぇ」

「彼は成績面だと、下から数えた方が早いかな。その代わり、2年生が優秀だ。次期部長とやらが学年トップクラスのデーモンクラスに限りなく近いウィザードクラスだ。ゆめゆめ油断なさらぬよう、気をつけよう」


顔合わせが終了して、再び防衛オブジェクトの構築に戻ります。


「坂道にして、コアフラッグの左右にディフェンスの密月(妹)と千野さんを配置。投石攻撃で、相手を近づけない。落とし穴に誘導すれば、ボクの悪魔的罠によって、相手のリタイアは確実。攻撃面はゴウリキさんと待田君がアタッカー。中間ポイントでは、千野さんの回復薬を受け取ってくれ。団三は状況に応じて、基本、こちら側のフィールドの中間ポイント近くで待機。臨機応変に対応してもらう」


「そろそろ、ゴウリキさんとも顔合わせして、作戦を話しておいた方がいいわね」


「いや、女子バレー部とは話が通してある。明日、ゴウリキさんが参加しての模擬戦の予定だ。この勝負に勝てる鍵は、ハーフの彼女に違いない。数少ない時間だが、存分にかりきゅー部に馴染んでもらおう」


「模擬戦?」

「ウチ、模擬試験やったら得意やねんけど・・・」

「千野さんは回復薬なので、今回の模擬戦では不参加でお願いする。メンバーは、」


ゴウリキ・団三ペア

待田・陽華ペア


「今回はこの組み合わせで模擬戦をやってみようと思う。異論ある人、いる?」


「バランス的には、この組み合わせがベストだと思います」

「パワーではデーモンクラスの彼女に、演算魔術ではウィザードクラスの私をぶつけたわけね」


「どんな化学反応になるのか、ボクはわっくわっくしてきたぞ」

「オラも、わっくわっくしてきたぞ」

「じゃあ僕も」

「ウチも」

「私は団三と同じチームがいいと、空気を読まずに主張する」


「ウチ知っとう!それ『嫉妬』いうんやで?うぷぷ、嫉妬知っとう・・・」

「ぐわぁ!千野先輩が壊れた!この人もツボがおかしい!」

「ヒッヒッヒッ、ヒ。カチュウ!!」

「あ、駄目だ。密月ビックハムスター先輩も連鎖的にツボってしまった」

「逃げましょう」

「それが正解だね」


本能的に危険をキャッチした2人は、一目散に逃げました。


「えーと、俺は剣道部かな?」


ガシッという音とともに、了は両肩を掴まれました。背後には、猟奇的殺人犯もかくやという形相のJKが2人。


「まーた、このパターンかよおおおおおぉ!!!!?」


扉の向こう側に、了の叫び声が木霊しました。団三と陽華は、いつかのように合掌しています。

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