第17話 クラス分け

「さて、『ブリッツ・ライン』のフィールド構築の前に、かりきゅー部の部員のクラス分けが重要になってくるわ」


華恋と交代して、今度は陽華が説明に回ります。ホワイトボードが裏面になりました。


「部活ごとのメンバーの能力に応じて、クラス分けがされるの。優秀な演算魔術を持った人が多いほど、クラスが高くなり、予算も獲得しやすいの」


キュキュっという、陽華がマジックでホワイトボードに書く音が響き渡りました。


・スポンサークラス(無能力級)


・マジシャンクラス(手品師級)


・ウィザードクラス(魔術師級)


・デーモンクラス(悪魔級)


・ルシフェルクラス(創始者級)


「この5つのクラスに分かれているわ。なお、ルシフェルクラスの数人は、異世界に研究に行ったまま、音信不通で行方不明状態ね。こっそり帰還しているという噂もあるけど、あくまで噂だから信憑性がないわ」

「陽華は胸がないね?」


華恋が体型を見せつけるかのように、挑発します。


「大丈夫。僕はちっぱいでも問題ないよ。女は器量だ」


「ウチはマジシャンクラスゆえ、能力少し見せまひょか?」


あまり胸に自信のない聡子が、強引に話題を変えます。


「是非ともお願いする。演算魔術は各個人によって能力が違う。新入生はまだ難しいだろうが、自分がどんな分野に能力が特化しているか、見極めるのが大事なことだよ」


「ウチの能力は、いつでも、どこでも、どんなときにでも、茶道セットを召喚して回復薬(お茶)を淹れることができるんよ」


聡子は着物の中から、とても収納できないほどのコップを出し、さらにどこからともなくヤカンを取り出し、熱いお茶を淹れていきます。


「本格的な茶道とはいかへんけど、略式で堪忍な。ウチはマジシャンクラスやから」

「ボクはデーモンクラスだけど、あくまで指揮に集中する。マシン開発がそのまま異世界へのアプローチにも繋がるので、一石二鳥どころか三鳥くらい狙えるかな。欲張るとキリがないから、ほどほどにしないといけないね」


華恋が片目を瞑って小さく舌を出します。わざとらしく、眼鏡を外して美貌をアピール。その仕種に、団三は少しドキッとしてしまいました。


「むーっ」


陽華は嫉妬して、頬を膨らませます。本人は華恋を威嚇しているつもりかもしれませんが、その様子が可愛く、華恋と聡子は様相を崩してしまいました。団三は苦笑いしています。


「それで、新入生は基本的に最初はスポンサークラスやねんけど、陽華ちゃんは新入生代表(主席)なだけあって、演算魔術の発現が早いんやね?」


聡子がフォローを入れます。


「ええ。私はすでに現段階でウィザードクラスと同等のポテンシャルを持っているわ。まあ、12歳でデーモンクラスに登り詰めていた、華恋お姉さんには負けますけどね」

「少し丁寧語を使っても、駄目。『密月先輩』よ、(妹)」


「なんやて!?括弧つけると、株式会社みたいに見えたで!」


団三のツッコミです。


「株式会社(妹)」

「じゃあ、あなたは株式会社(姉)ね」

「じゃあ、ウチは茶道式会社かしらん?知らんけど」

「じゃあ、僕は・・・ツッコミが追い付かないので白旗を挙げる」


団三が降参しました。


「僕はスポンサークラスの無能力級だよ・・・、生まれてきてごめんなさい」

「オッス、オラ待田。町田じゃなくて待田だ。みんな間違えるなよ、お兄さんとの約束だ」


そのとき、剣道部との約束を取り付けた了が戻ってきました。そうです。彼もかりきゅー部だったのです。


漢字ネタを使用したため、一同は静まりかえってしまいました。シーン・・・という擬音が聞こえません。本当に沈黙です。


「密月先輩、この生意気そうな餓鬼は誰でっか?」

「千野先輩、素が出てます。どうどう」

「ウチは馬やあらへん!!」

「ひぃい、なんだよこの毒舌和服美少女の先輩(仮)!?」

「あら、美少女?ウチが美少女に見えるん?ホンマ?お世辞抜きで?」

「はい!むっちゃ美少女です!あとは毒舌を直してもらえば、今すぐデートに連れていってもらいたいくらいの美少女です!」

「あらあら、見どころのある餓鬼やないの。ウチは千野聡子いいます。よろしゅう、おおきに」

「待田了です。年上好きを自負しています。よろしくお願いします!」

「アピールタイム終了。待田君、ボクが開発したマシンの実験台(直球)になってほしいんだけど、いいかな?」

「ひぃい、俺は年上好きだけど、あくまで年齢が近い方がいいな?多分、華恋先輩と付き合うと、ペット扱いされて何も言えなくなりそう」

「ほな待田君、少し年上の和服美少女からのお願いや。かりきゅー部の発展のために、実験台になってくれへん?」

「俺、生け贄?拒否権は?」


了は同級生である2人に顔を向けます。


「ないわ」

「犠牲になってしまった。了、君のことは忘れないよ」


「悪魔や、悪魔がおる」

「あ、関西弁のツッコミ」


「こんなところにいられるか、俺は逃げるぞ!」


逃げようとする了の両肩が掴まれます。


「そうはいかへんで!」

「せっかく入手したモルモットだからね。贅沢に使わせてもらうよ」


「ひぃい、女性の先輩との初めてのスキンシップが、こんな形なんて嫌だーーー!!!」


ズルズルズル、という音とともに、一人の男が引き摺られていくのを、団三と陽華は合掌しながら見送りました。

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