第16話 密月華恋の本音
「ぶっちゃけて言うと、『ブリッツ・ライン』はボクの研究資金稼ぎも兼ねているんだよね」
華恋が本音をぶちまけています。
「新入生を実験台にするのは少し憚るけど、最上級生の主席として、権限を使いつつも今後のためになるべく資金を稼いでおきたい。そういう裏事情も理解してもらえると、助かる」
「お姉さんらしいわね。陰謀・策略が大好きなところ」
「それで、具体的にはどういう金儲けのシステムなのですか?」
団三からの、素朴な疑問です。
「『ブリッツ・ライン』はダイバー(スタメン)最大5人、リザーブ(控え)1人、オブサーバー(指揮)1人。これが基本ルール」
改めて、『ブリッツ・ライン』のルール説明です。
「つまり、ボクらの現メンバーだと・・・」
・ダイバー(スタメン)
隼人団三
密月陽華
待田了
ゴウリキ・彩菜
千野聡子
・オブサーバー(指揮)
密月華恋
「という構成になるね。リザーブがいないのが厳しいけど、実績を挙げればどうにかなるかな。ゴウリキさんがウチの部内ではダントツの戦力だけど、バランス的にはパワー系と頭脳系がはっきり分かれているね」
「僕は一応、バランス系になるのかな?」
「団三は貴重なユーティリティプレイヤーね。千野先輩は、本当に役に立たないわ。ぶっちゃけ、茶道部から戦力外になっているわ。茶道要素と『ブリッツ・ライン』の競技要素が全く関係ないのが痛いわね。まあ、私もあまり人のことは言えないけれど・・・」
「陽華ちゃんほどではないけど、ウチも頭脳には自信があるで?」
「うん、頭脳系の女の子2人には、回復役と現場での状況判断という大事な役割がある。今の戦力を最大限に活用するために、ボクがマシンを開発している。それを他の部活にアピールすることで、売り上げに繋がるわけだ」
「つまり、敢えてメンバー不足というハンデを抱えたままで、実績を挙げていくのが当面の目標になるわけやんな?」
聡子の合いの手です。自ら頭脳系と自負するだけあって、飲み込みが早いようです。
「了から連絡があって、剣道部のメンバーから『ブリッツ・ライン』の練習試合を兼ねた説明がほしいという打診がきています。どうしますか、密月先輩?」
団三が、了からのメールをスマホごと華恋に見せつけます。
「一度、大々的にデモンストレーションとして、『ブリッツ・ライン』の公開試合をやった方が良さそうね。まず、ルールをサーバーに保存して、各部活に配布。フィールドの設定に準備期間が必要。そして、剣道部との練習試合は4月の後半にしましょうか」
「それくらい、フィールドの設定に時間がかかるというわけね」
「マシンはウチ(異世界研究会製)と、時間溯行同好会からオフィシャルで販売されるけど、部費に応じた予算からの差し引きになるので、かりきゅー部に関してはボクが廉価の素材を流用して、安価で費用対効果の大きいものを独自に作製するつもりだ。ボクに任せてくれたまえ」
華恋が自信満々に自分の胸を叩きます。義妹である陽華は、揺れる華恋の胸を羨ましそうに眺めていました。
「フィールドの設定といっても、バリケードとかそんな感じだ。運動が苦手な女の子にはディフェンスを担ってもらう。ゴウリキさんと待田君がメインアタッカー。隼人君、君は中継役を担ってもらう」
「中継役?」
「状況に応じて、攻撃が不足している場合はアタッカー、防御が足りない場合はディフェンス。トランプで言うジョーカーの役割よ」
「よくわからないけど、面白そうだな」
「今はわからなくてもいいけど、臨機応変さが求められる重要な役割だね」
華恋がホワイトボードにフォーメーションと、それぞれの名前入りの駒を動かして、状況の推移を説明します。
「中間ポイントの到達。ここまで行けば、後は敵のフィールドだ。なるべくポイントの高い地点に潜れば、敵の陣地の奥深くに移動できる。そのぶん、敵の罠や守りも厳重になるんだ」
「ダイバーの過半数(3人)の撃破、もしくはコアフラッグの破壊が勝利の条件ね」
「このメンバーだと、全員で攻撃という作戦はまず不可能。ベタだけど、基本的な戦術が一番有効だね」
「それで、具体的にどんなマシンを開発するんですか?」
「んー、開発案はあるけど、サンプルが少なすぎて、実験が進んでないの。とりあえず2人に協力してもらえるかな?」
「じゃあ、ウチはお茶でも飲んで、のんびり眺めておくわー」
「あんた何しにここにおるねん」
団三による、上級生に対する容赦ないツッコミです。関西弁がかぶって面倒くさい!
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