第14話 かりきゅー部

「決闘システムには改善の余地があるわね」


華恋が眼鏡を上げる仕草をしながら語ります。


「時間溯行同好会からの提案がある。同好会と研究会の対立はひとまず2、3年生に任せて、君たち新入生は実験的に部活対抗で競ってみてくれないか?」


「ボクも、剣君と同じ見解だ。まず既存の部活から、クラス対抗でランクアップする激嵐学園独自のシステムでの切磋琢磨を目指す。それが、今年度の新入生の1年間でのルールだ。ボクの権限に加え、剣君、学園長の承認も得ている」


「華恋お姉さんらしく、根回しも完璧ってわけね」

「型に嵌められてもうた!!」

「それで?私たちは通常の部活に入ることは可能なの?」

「さすが、ボクの妹。察しがいい」


華恋が陽華を拍手します。


「ぶっちゃけると、例の後悔プロポーズが大反響を呼んでいる。ちょっとボクの予想の斜め上を突き抜けて、効果覿面だったようだ。バカップル(仮)を通常のように部活させるな、という意見が主に2、3年生から噴出している」

「うむうむ」


剣が頷きます。某異世界人みたいに何回も頷きます。


「じゃあ、私たちは新しい部活を立ち上げるしか方法は残されていないのね」

「他のメンバーはどうやって探そう?」

「俺がいるぜ!」

「待田君、草むらからガサッと出てくるのはやめてちょうだい。野生のホ。ケモンかと思ったわ」

「陽華の攻撃!ボクの笑いのツボにヒット!!ぶははははっ!?」

「華恋さんはホ。ケモンがブロックワードだね」

「字にすると笑えるが、会話だと訳がわからん!」


剣将軍による、メタ発言的なツッコミです。


「えーと、俺は剣道部かな?」

「了、今は時間溯行の要素はいらない。真面目にお話ししましょうね」

「はい!華恋さんの役に立ちます!」

「じゃあ、ずっと立っててね?」

「義妹(仮)の言うことは聞きません!」


「誰が義妹よ!私の方が年上よ!」

「1ヶ月くらいかな?」

「ボクの義妹は陽華ではない。光陽だよ」


華恋、団三、陽華による集中砲火です。さすがの待田も、これには耐えられません。


「ごめんなさい」

「よろしい。俺が許す」

「なんで剣先輩が偉そうにするんですか?」

「少しは先輩を敬いたまえ」


「で、ようやくメンバーが3人ね」

「時間溯行同好会からも、メンバーを提供しよう」

「剣君、言い方」

「訂正。新入生最強のパワーとスピードを兼ね備えた、最高のハイブリッドハーフだ」

「う、その言い方で誰かわかったで!」

「ゴウリキ・彩菜さんね?」

「その通り。決闘システムの代案も草案が出来上がっているが、頭脳とパワーをバランスよく戦術に組み込むことが肝要だ。そこで、次期オリンピック代表候補でもある、特待生を君たちの部活に貸し出す」

「「言い方!言い方!」」


陽華と華恋による、ダブルツッコミです。


「彼女は了承しているが、今日はバレー部を優先するとのことだ。顔合わせは明日。基本的にバレー部優先という条件だ」

「オリンピック代表候補だからね、仕方ないね」


「俺からは以上だ」

「じゃあボクも異常だね。一人称が」


「・・・お姉さんの場合、そっちが『まだ』マシだからね」

「ボクッ娘最高!」

「駄目だこいつ、早くなんとかしないと」


「とりあえず、部活の名前を決めて締めくくりましょう」

「団三、意見ある?」

「カリキュラムに反する、という意味で『かりきゅー部』という名称はどうかな?」

「「賛成」」


「ボク的には、ヒ。カチュウ部がベストだと思うけど。ヒッヒッヒ、ヒカチュウ・・・」


「よし密月(姉)、保健室まで自力で行けるな?俺がセグウェイを持っていくぞ」

「あ、待ってぇ。ボクの交通手段を持ち逃げすると、『私』が出るよ?」

「ひぃいっ、ごめんなさい申し訳ございませんお詫びします許してください」

「よし許す」


剣将軍は、密月姉妹と相性が悪いようです。

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