第10話 密月三姉妹・2
現在の密月家は、陽華の両親が異世界の研究者であり、激嵐学園の教員でもあるため、異世界を行ったり来たりしているため、不在が基本です。
陽華の従姉妹で、密月家の年長者(仮)である華恋が帰宅しました。
「ただいま帰りました」
彼女もやはり、陽華と同じように鉄面皮を被っているので、本拠地に帰宅してからが本性を現します。
「かれんさま、おかえりなさいませ、でござるか?」
「んー、光陽、『でござるか?』は疑問文だからね。『おかえりなさいませ、かれんさま』の言い方がメイドさんらしいよ?」
「はいでござる!」
「よし、今日から光陽の役割はメイド侍だ!手始めに、お姉ちゃんの部屋に襲撃。これ、武器の木刀(異世界製・効果不明)。レッツゴー!!」
「はいでござる!!」
義妹が義姉の部屋に突撃します。部屋の鍵はかかっていません。
「来たな、光陽!今日は下着はいてるから負けないわよ!」
「陽華!それ負け台詞みたいな感じ!」
大声で、姉妹喧嘩が幕開け。華恋はブラジャーを着用していません。彼女のバストサイズは悲しくなるほどのものなので、ここでは明かせません。察してください。
「メイド侍!武器を使え!」
「つかいかた、わからない」
「適当に使ってみてくれたまえ」
「がってん!」
光陽は木刀を放り投げました。
何も起こりませんでした。光陽はまだ7歳の女の子。放り投げるというより、落とすという表現です。
「不味い!5秒後に爆発する!」
「ふええっ?」
「危ない!・・・5秒?」
時限爆弾の時間に、疑問を抱いた陽華。時間差攻撃のトリックに気づきました。
咄嗟に陽華は、足元にあったテニスボールを転がして、木刀をキャッチ。窓の外に放り投げました。
ボンッ!という音がして、煙が上がりました。
「ちぃ!バレたか」
「この手は通じないわ、お姉ちゃん!」
陽華は、ほんのささやかな胸を両手で隠します。
「第2作戦!ボク自らのスマホで、自慢の妹の美麗で荘厳な姿を盗撮!」
陽華は左手で胸を隠しながら、右手で野球のボールを構えて、大きく振りかぶり投げました。手投げにしては異常な速さです。
「きゃあっ!」
華恋は女の子らしい悲鳴をあげ、手にしていたスマホを落としました。
『メイド侍!!』
光陽が年長者のスマートフォンを拾います。
「地元でとれた鶏でござるか!?」
パシャリという擬音とともに、光陽はピースサインを作って自分の愛くるしい笑顔をスマートフォンの画面におさめました。
『それ、自撮りや』
姉妹(仮)のツッコミがハモりました。
「はぁ。とりあえず、妹ちゃん。サービスシーン用に脱いでくれたまえ」
「嫌よ!今日は負けないんだから!!!」
「メイド侍は買収済みだよ。ボクがスマイル天使の胃袋を支配するからね」
「ほんやく!今日の料理は華恋さま!明日も
あさっても!!」
陽華は一瞬たじろぎますが、怯みません。
「来るなら来い!そのときは、お姉ちゃんの寝顔をネットにばらまくんだからねっ!」
「それぐらいで、このボクが諦めるとでも思って・・・」
「メイド侍とのキスショット!この画像で、お姉ちゃんを買収するわ!」
「えっ、マジで?ヤバい昨日早めに一緒に寝たからあり得るかもしれない。ちょっと見せて見せて」
華恋がフラフラしながら近付きます。本当に寝不足かもしれません。
「今だ!光陽ちゃん!華恋さまの顔に飛びついてちょうだい!キス攻撃よ!!」
「わーい!かれんさま、だいすきーー!」
「えっ!?キスショットって、もしかしたら、今!?」
華恋は7歳になる義妹に抱きつかれ、押し倒されました。
「私は今のうちに服を着る。時間稼ぎ、成功」
陽華はスカートから履きます。現在、この家でブラジャーを着用しているのは華恋のみ。そして、華恋のバストサイズはなんとFカップ。ぶっちぎりで高校生離れしています。陽華がこっそり着用してみたのは、黒歴史です。
「わざとらしいよ、陽華!!」
「光陽ちゃん、適当に華恋様とじゃれあってて!」
「はーい!でござるか?」
「7歳児って重い!ボクの下腹部にボディープレスはやめて!!」
「妹がにっくきマッドサイエンティストの下半身(意味深)にボディープレスをかけている」
「ラノベ風のツッコミ駄目!やめて!やめてちょうだい、陽華!あっ、ひゃあっ!?ムービーで撮るのはやめてください!ごめんなさい!マジでごめんなさい!」
「ごめんなさいでござるか?」
「ハンバーグ作ります!晩ご飯!希望があれば、今から買い物に行きます!」
「よし、行け!」
光陽は馬乗り状態から、華恋様の身体を解放しました。
「お姉ちゃん、いや華恋さま。ちょっとそこに座って。家族会議を開始します」
「はい」
「はいでござる!買い物は間にあっている」
3人が正座します。
「華恋お姉さんが養子縁組にならなかったのは、なんでだっけ?」
「ボク、自立してたもん」
「その一人称!光陽に悪影響を及ぼすから、引き離されたんでしょう?」
「そうだったかなー?まったく記憶にございませーん」
「光陽、華恋お姉さんに話しかけてみて」
「かれんさま」
「で、私は?」
「ひばなおねーちゃん!」
「私の方が礼儀正しいわね」
「はい」
「華恋お姉さんは頭脳は優秀かもしれないけど、礼儀やマナーがなってないわ」
「陽華お姉ちゃんは厳しすぎると思います」
「はい」
「ちょっと光陽!あなた、どっちの味方!?」
「りょうりのおいしいほうのみかたでもある」
「優柔不断ね」
『はい』
「早く激嵐学園の研究室に引きこもってちょうだい」
「まさか義妹から引きこもり勧告を受けるとは思わなかったよ。ボク、まだしがないJKだよ?」
「こんな変態マナーの悪いマッドサイエンティスト・・・はっ!」
華恋の額に十字路が浮かび上がっています。眼鏡を静かに机に置きました。
「どうやら『ボク』では抑えきれないみたいだね・・・。真の力を見せてあげよう」
「ここからが、ほんとうのじごくのはじまり」
「光陽!テレビのナレーションの真似、やめて!マジで!洒落にならない!スミマセン!ごめんなさい!申し訳ないです!お詫びします!どうか、裸の写真だけは許してください!」
「よし、裸の写真だけは許そう」
「それ以外は、なにしてもかまわないでござるか?」
「悪魔や、悪魔が、2人」
ところで、三姉妹が晩ご飯を無事に食べるのはいつになるのでしょうか?
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