第6話 異世界研究会
新入生の属性投票が終わりました。結果は、異世界研究会が73%、時間溯行同好会が27%という比率でした。
属性投票は進学先の希望調査的なもので、所属したからといって本格的に研究が必要というわけではありません。多くの生徒は、普通の部活に入って活動をします。文系が異世界研究会に多く、体育会系が時間溯行同好会に多いという傾向がありますが、必ずしもそうとは限りません。
「思ったよりも私たちの異世界研究会に伸びなかったわね」
「カップルアピールのインパクトが強すぎたのかな?」
「お、思いださせないでよね!団三のことなんか、ただの虫よけスプレーなんだからねっ!」
「安っぽいなぁ。ツンデレ?」
「デレツンよ!」
「僕、自分の属性を自分で説明する美少女って見るの初めてだよ」
「び、美少女・・・」
陽華の顔が真っ赤に染まりました。熟れすぎたリンゴのようです。
「はーい、そこのバカップル。入学式で派手に目立ったからって、あまり調子にノリ過ぎないように」
白衣を着たつり目の眼鏡をかけた団三よりも年上の黒髪ロングの女性が、2人を注意します。
「華恋お姉さん!」
密月華恋(みつづき・かれん)。陽華の従姉妹にあたる激嵐学園の3年生です。慎み深い陽華と違って、女性であることをアピールできるグラマラスで豊満な身体をしています。
「華恋さんが異世界研究会の会長さんだね」
待田の台詞です。彼も、団三と同じ異世界研究会を選びました。
ちなみに、入学式の後で場所が移動しています。団三たちの現在地は「異世界研究塔」で、対立している時間溯行同好会の本拠地は「時間溯行同好棟」にあります。剣将軍が好戦的な性格なので仲が悪いと思われがちですが、本来の目的は2つの組織が相互協力して切磋琢磨するというものでした。
学年ごとの比率でいうと、最上級生は新入生と比率が逆で時間溯行同好会が多く、2年生の比率は半々です。ちなみに、2年生は比較的穏やかで、他の学年よりも和気あいあいとした雰囲気を醸し出しています。
そして現在、異世界研究塔に集められたのは、2年生を除く研究会に所属するメンバーです。
「自己紹介ね。さっき大観衆の前で盛大にコクられた陽華ちゃんの親戚にあたる密月華恋です。現・異世界研究会の会長を勤めています。よろしくね、新入生」
陽華よりか、いくぶん明るい印象があります。3年生だけあって、場馴れした数が違うようです。
「さて、ボクが思うに・・・」
「はい!会長はボクっ娘ですか!?」
話を遮って大声で挙手したのは待田です。彼は年上好きなので、興奮が隠しきれていません。
「空気を読めないのは感心できないが、先に説明しておこうか。『ボク』は眼鏡をかけているときの自己暗示みたいなものだよ。悪癖だと理解しているが、修正できない。こればっかりは、ボクのエゴだね」
華恋は言動とは不釣り合いな豊かな胸を揺らします。あるいは、自分の身体に自覚があるからこそ、言動で時間溯行同好会の会長である剣将軍に対抗しているのかもしれません。
「話を戻そう。ボクが思うに、時間溯行同好会のメンバーは、真っ向勝負では強いが、絡め手に弱い。極論、裏切りや寝返りで剣将軍の牙城を崩せば、あっという間に崩壊するだろう」
「やることエグっ!」
待田の台詞です。
「華恋お姉さん、相変わらずね」
「ずっとあんな感じだね。僕は眼鏡をとった方の華恋さんがかわいいと思うけど」
「何っ!?」
「団三、浮気したら下半身に膝蹴り喰らわすわよ」
年上好きの待田と、団三ラブの陽華が反応を示しました。
「ひいいっ。今さら暴力系ヒロインは流行しないよ」
「陽華、いや学校だから密月(妹)。はしたないこと言わないの。だん・・・隼人君もびびっているでしょ」
「ごめんなさい、密月(ビッグシスター)さん」
「密月先輩と言いなさい」
「密月センパーイ!!」
「いい返事ね、待田君。でも『私』は年上好きだから、あまり期待しないでね?」
「ボクっ娘でもいいです!」
「残念ながら『ボク』は学園生活が楽しくて、恋愛には興味がないんだ。あと、せめて自分と同じ目線で語れるくらい賢い人でないと張り合いがないよ」
華恋は眼鏡をかけ直しました。
了は意気消沈として落ち込んでいます。
「同じ人に2回続けてフラれるなんて、なかなかできることじゃないわ」
「言い方!泣きっ面に蜂!容赦ないね陽華!でもそこがいい!」
「ありがとう、団三」
陽華と団三のコンボで、了は燃え尽きてしまいました。まるで、どこかのボクシング選手のラストシーンのようです。
「とにかく、これから説明する『決闘』システムと、今後の部活選びが重要になります。特に異世界研究会の場合は文系の部活が強いけど、体育会系の部活が弱い。弱点を補いたいけれど、こればっかりはウチの学園の伝統でもあるから、強制はできないね」
新しい設定の「決闘」システムとは、どのようなものでしょうか?
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