第3話 卒業式

長いような短いような時間が過ぎて、団三は目を覚ましました。


「はっ!?夢か・・・」

「どんな夢見てたの?」


黒髪をミディアムにまとめた美少女が、身を起こした団三の顔を覗きこみます。


「なんだか、全裸の僕がサンドバッグになって陽華にキックボクシングされている夢だったかな?」

「いぢめ?」

「うん」

「なんだか、ゾクゾクしてきたわ」

「やめて!新たな性癖が目覚めちゃう!」

「そう。・・・無事で良かったわ」


そう言って、陽華は団三から顔を背けました。


~~陽華~~

ドキドキドキドキドキドキ・・・。

さっきから、心臓の鼓動が早鐘を打ったように聞こえる。

本当に、団三が無事で良かったわ。

あああ、恥ずかしくてまともに顔が見れない・・・。


「どしたの?」

「ふぁあ、ひゃい!?」

「珍しいね、陽華が慌てるなんて」

「慌ててなんかにゃいわ」

「・・・噛んだね」

「・・・ごめんなさい」

「いや、こちらこそ。ところで、ここはどこなんだい?」


団三は周囲を見渡して、状況を確認しました。

廊下。

扉の向こう側から、大勢の話し声が聞こえています。


「そうだ、入学式!」

「その前に、卒業式があるみたいね。はい、これ」


陽華が団三に入学案内のパンフレットを渡します。


「卒業式?」

「私たちの入学式の前に、現3年生の卒業式が先に執り行われるみたいね」

「ちょっと待って、意味わからんぞ!」

「私だってわからないわ。時間溯行なんて、日付変更線に向かって、ジェット機でずっと逆走すれば理論上は可能なの。エネルギー問題と金銭問題などなど、デメリットしかないわよ」

「って、もうこんな時間!すぐに行かなきゃ!」


団三と陽華は大慌てで移動しました。


~~団三~~


団三と陽華が体育館に到着したのは、開始予定時刻のわずか10分前でした。


「ふぅ。なんとか間に合ったぞ。」

「はぁ、はぁ・・・。さすがだんぞー、私にはできにゃいことを・・・簡単にやってのける!そこに痺れるっあ、きょがれるわ!!」

「ありがとう!でも、全力疾走した後は無理して喋らないほうがいいんじゃないかなと、僕は思うんですよ」


涼しい顔をする団三の後ろから、青い顔をした陽華が息をきらしています。体育会系(一応)の団三と、文系の陽華の体力の差が、如実に現れる結果になりました。


「じゃあ、また」

「しばらくお別れね」


名前順で、2人は別れます。


「やあ団三、久しぶり。それに密月さんか。相変わらず仲良しだな」

「待田君。あなたも元気そうね」


待田了(まちだ・りょう)。団三の悪友にして、陽華とも仲良しです。


「あの大柄は、ゴウリキ・彩奈さんか。オリンピックの強化指定選手に指名されただけあるなぁ。ガタイとオーラが段違いだよ」


団三の目線の先には、周囲の学生とは2頭身ほど規模の違う、大柄な女性の後ろ姿がありました。


ゴウリキ・彩奈(あやな)。日本人の父親とフィリピン人の母親をもつハーフで、激嵐学園中等部では、女子バレー部のエースアタッカーとして、全国大会優勝に導きました。


「異世界の方々は、あっちの特別クラスか。面白そうな子はいるかな?」


団三の視線は、今度はエルフやドワーフといった「いかにも」といった感じの異世界人が集められてしました。


さて、入学式の前に卒業式とは、どういうことでしょうか?

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