第10話 8/2 亀田茶寮

コテージ・ラ・カメダに到着した。到着するとすぐに和室に通された。


「管理人の東郷十兵衛と申します。この度はお越しいただき有難うございます。まずはおもてなしのタピオカドリンクをお飲み下さい。」

「華音,タピオカやで。嬉しいのぉ。」

「とらたん。ここのタピオカはどうなんだろうね。」

「ではいただきます。」

亀田茶寮のタピオカは抹茶のドリンクの中にタピオカとわらび餅が入ったおいしい飲み物であった。

「これは和のタピオカですなぁ。」

「お気に召されましたか。是非とも陶器の絵柄にもご注目下さい。」

トンボとカゲロウの柄が茶碗に描かれている。虎之助は残りの日々をふと思って物悲しさを感じた。


「隠岐殿。どうかなされましたか。物憂げな表情を浮かべられて。」

管理人の東郷はその変化を見逃さなかった。心よりのおもてなしを追求する者として相応しい気づきであった。


「いや。夏の儚さに想いをいたしていただけでございます。茶はとても美味しゅうございます。」

「左様でございますか。ごゆるりとなされよ。」

茶道のようなそんなひと時を過ごした。茶道とタピオカを合わせたおもてなしのようである。


その後タピオカを飲み干すと,コテージに向かった。


「ねぇ。とらたん。どうしたの?」

華音はお茶会の後から表情が曇ったままの虎之助を見て心配になっていた。

「俺には何ができる。」虎之助は半分怒りを込めたような声を発した。

「とらたん。なんか変だよ。」

「俺にはセミと同じくらいの時間しか残されていないんだろう。」虎之助は怒りから一転して涙を流し始めた。

「とらたん。大丈夫だよ。落ち着いて。」

「落ち着けるか!俺は死が怖いんや。もっと華音と一緒に居たい。色々な風景をみたい。なのに蝉と同じくらいしか生きられんのや。そしてあいつらに追われている。自由な時間はほとんどないだろう。」 

「でも私はとらたんと一緒に過ごせて嬉しいよ。だから特別なことはいらないよ。とらたんと過ごす日々が幸せだから。私のために無理し過ぎないでね。」

「その言葉は本当か?嘘じゃないよな。」

「うん。本当だよ。だから自分のために生きてね。」

「そうか。じゃあ今日からかけがえのない日々を大切に生きなければな。ワシのやりたいこと。そうだ。動画を撮らんとな。」


コテージにはWi-Fiが接続されていた。ゲーム機もあり,実況をすることにした。

「ワシはゲームは得意なわけではないけど,居場所がバレないような配信をするにはもってこいじゃ。華音,よろしく頼んだ。」










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