第8話 動画配信者とらたん

前日のバトルのせいですっかり体力を消耗し,その日はぐっすり眠ることができた。


「さて,遅くなった。皆心配してたじゃろ。今まで浮上してこなかったからなぁ。どうも虎之助TVの虎之助じゃ!突然ながらあと1ヶ月少々で私は引退する。最後の祭りといこうじゃないか!」カメラに向かって虎之助は話す。

「そして,今回からアシスタントをお迎えして撮りたいと思う。副島華音さんです。」

「どうも,かのんです!宜しくお願いします。」

「そこでチャンネル名も変えることにする。虎ノ華チャンネルということで最後の1ヶ月お送りしていくことします。皆頼みましたぞ。では今日はこの辺で。」

【SEE YOU】


簡単な挨拶をビデオに撮り,編集して投稿した。


「とらたん。なんか新鮮だね。自分たちで作品を作るなんて。」

「まぁ,クリエイターは一人で多くの作業をする。女優業はプロフェッショナルだが,クリエイターはオールラウンダーである。全ては自分にかかっている。多くのスタッフがいる現場を尊敬する。」

「色々やるにも苦労があるんですね。宜しくお願いします。先輩。」


「一人でやってれば苦労は多い。人の手が必要となる。だが多すぎるとなかなか事が上手くいかない。難しいところや。」

「そうですね。」


「さて,朝食バイキングでも行くか。」

「はい。」


びわの市の銘柄豚のハムをはじめ,地元の新鮮野菜を中心としたヘルシーなバイキングであった。

「やはりびわのの野菜は新鮮でうまい。この街は誇りや。」たらふく野菜を食べた後に,虎之助は言う。

「このスイーツだって多くに野菜が使われているんでしょ?」

「ああ。そうだな。だから一日の始まりに適しているよな。低カロリーで。」

「でも本当は夜が低カロリーのほうが良いのよね。」

「正論言うなよ。でも朝は重いの入らんだろう。牛丼なんかきついわ。」

「それもそうですね。」


朝食を食べ終わってから荷造りをした。

「さて,そろそろ行こうか。」

「待って,チェックアウトって何時だっけ?」

「10:00だったはずだけど。どうかしたのか。」

現在は9:00となるところである。あと一時間というところだ。

「昨日いろいろあってお風呂に入ってなかったよね?」

「ああ。確かにそうだった。」


黒田丸夫による襲撃を受け,気疲れを起こしてしまいそのまま寝てしまったのだった。

「じゃあ。そこの露天風呂を交代で入ろうか。」

「とらたん。駄目だよ。とらたんは,私の希望なんだから。」華音は急にデレ始めた。

「お。おい,どういうつもりなんじゃ。」

「私,怖いの。とらたんがいなくなりそうで。だから精一杯の温もりを感じていたいの。」華音は泣きそうになりながら虎之助を抱きしめる。

「おい!やめえや。俺はまだここにいる。お前を守り抜く。だから安心してくれ。」


虎之助は風呂に入った。身体から疲れが抜けていく感じだ。


「しばらくぶりのお風呂じゃ。やはりお風呂はええのぉ。」

露天風呂から見下ろす街は最高であった。

チャプン……その時湯が跳ねる音が聞こえた。

バスタオルを巻いた華音が入ってきたのである。

「ごめんね。どうしても我慢できなかったの。寂しくて不安で。」

「そりゃそうだよな。あんなことがあったんだもんな。」


かつて市長だった時に,応援大使として交流のあった娘が布一枚でそばにいる。これがバレたらスキャンダルものだと虎之助は思っていた。


「副島さん。もしかして俺に恋でもしている?」

「えっ…⁉︎これが恋なのかな……」華音は頭が混乱しているようだ。しかし,顔は赤らんでいる。

「大丈夫だ。俺はあんたを振ったりしない。これからも宜しくな。」

そういうと二人は口づけを交わした。




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