第5話 初めての夜

「あれ?何でこんなに時間が経っているの?私どうかしたのかな?」華音は虎之助に聞く。


「あれは一体なんだったんだ?」

「とらたん。どうしたの?いつの間にか黒服の人達は消えているし。」


「何だったんだろうね。あの人達。」

動きが止まっていたので時が止まっていたように感じていたが,実は時間は動いていたようである。


「これから長い旅になると思う。よく準備をしてこい。華音のことは,何があっても守り抜く。」

「とらたん。分かったよ。少し待っていてね。」

華音はアパートの中に入っていった。


「はぁはぁ。さっきの戦がこたえたか。年寄りにはきついのぉ。」スーツケースから水を取り出し,飲み干した。


「とらたん。着替えてみたんだけどどうかな?」花柄ワンピースに着替えてきた。


「凄く似合っとる。ワシは幸せもんじゃ。お前と出会えてな。よし,準備は出来たみたいじゃな。これから遠くに行くぞ。その前に,今日はホテル風雲閣に泊まることにせぬか?」

「風雲閣ですか?良いですね。久しぶりの温泉。楽しみだなぁ。」



電車を使ってびわの飯山温泉駅に着いた。

びわの飯山温泉は,硫化泉であり火山の下にある温泉である。それなりの歴史があり,11軒のホテルと5つの共同浴場がある。


風雲閣は模擬天守みたいなものであり,物理的にも金額的にも高い店であった。


「最上階は空いておるか?」

「ええ。空いてますよ。隠岐様。」フロントの女性は答えた。

「最上階の城主の間の北を借りることにする。」

「分かりました。お食事はどうしますか?」

「今日はビュッフェにしようかな。華音さんはまだ若いしの。」

「とらたん。気配りしなくて良いのに。」

「今日はわしも盛大にやりたいのや。久しぶりの旅やからの。」


エレベータを使用して最上階にのぼる。


「とらたん。綺麗だね。」

「この眺めはびわのの誇りじゃ。牧場もあるし,田畑も豊かじゃ。」

「海から山まであるなんて凄いよね。」

「合併によって飯山町もびわの市になったからなぁ。さて,部屋に行こう。」


中央には囲炉裏がある。そこで野菜などを焼くのだ。囲炉裏を挟み左右に部屋がある。そこが寝室となっている。


「さて,この様子をカメラに収めるか。」虎之助はカメラを回した。びわの市の風景を一通り回した。


部屋からカメラを回す。

「どうも!隠岐虎之助です。久し振りの更新となります。ご覧の通り私は元気です。皆心配かけたね。ごめんよ。だけどこの1ヶ月で私自身は引退するよ。」


二人の物語はこれから始まるのである。

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