エピローグ
それから半年後、僕は建築関係の会社に再就職をすることになった。
「じゃあ、行ってくるよ」
スーツ姿の僕に椿がカバンを差し出した。
「今日も頑張ってね」
そう言った椿に、
「遅くなりそうだったらメールするから」
僕はそう返事をすると、カバンを受け取った。
椿との同居――いや、同棲生活はまだ続いていた。
「大地」
椿が僕を見つめてきた。
「うん」
僕は返事をすると、椿の唇に自分の唇を重ねた。
チュッと触れるだけのキスをして唇を離すと、
「これで私も頑張れそう」
椿はフフッと、イタズラっぽく笑ったのだった。
僕も頑張れそうだと思ったのは、ここだけの秘密である。
「じゃあ、行ってくるよ」
「行ってらっしゃい」
椿に向かって手を振ると、彼女も笑顔で手を振り返してくれた。
僕はドアを開けると、その場を後にしたのだった。
10年前、好きで好きで仕方がない女の子がいた。
もう会えないんじゃないかと思っていた。
だけども…好きな女の子と再会することができたうえに、その子と結ばれて、幸せな生活を送っている。
「――事実は小説よりも奇なり、か…」
そんな言葉を口の中で呟くと、僕は笑ったのだった。
☆★END☆★
恋愛小説家の彼女は恋をしたことがない 名古屋ゆりあ @yuriarhythm0214
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