『龍ケ崎』VS『凛』

 両者はお互いを探るように向き合い一歩も動かない。しばらくそれが続くと不意に凛が動き出した。龍ケ崎に目掛け突っ込んでくる、と同時に手に持ったハンドガンの銃口を龍ケ崎へと向ける。

さすがの速さだ、仲間として見れば頼れるメンバーの一人なのだが敵になると関わりたくはない相手の一人だ。

一発の軽い銃声、走りながらでも正確に敵の急所をピンポイントで狙う技術力

その弾を体を横に倒して避けながら龍ケ崎は目の前の敵に賞賛を送る。と同じく叫んだ

「ハンドガン 『G1977』」

体が横へと倒れていく中で自身に突っ込んでくる敵に銃弾を放つ

その弾丸は先ほど放たれた銃弾同様に敵の急所を正確に狙う。しかし相手は負けじと体をくねらせてアクロバティックに避けると最後の着地でタンッと大きく飛び跳ねた。

そして体をねじる動きをすると

「ソード 『双龍』」

先ほどのハンドガンを刀に変えて回転の勢いそのまま相手目掛けて自身ごと降りそそいだ。

龍ケ崎は咄嗟に片手をだし地面に打ち付ける力を利用し地面を転がるようにして上から来る凛の攻撃をギリギリのところで避けた。

 その攻撃の威力はコンクリートを破壊し辺りに土煙を漂わせた。あたっていれば一撃だっただろうことは容易に考えられる。起き上がろうと地面に手を置いた瞬間目の前の土煙から刀が飛び出してきた。淡く光を放つその刀を寸前のところで

「ソード 『時雨』」

手元に出した自身の刀を大きく振ってまっすぐ伸びてくる起動をそらすと後ろに下がり間合いを取り一度態勢を立て直す。一瞬の気の緩みさえ許してはくれない状況。

「さすがだな」

相手の身体能力の高さを侮っていたわけではないがここまでとは思っていなかった。凛は余裕綽々と言ったように刀を振り下ろして次の攻撃のタイミングを伺う。

早さや身体能力では勝てないだろう、ならどうするか。答えは簡単だが実現させるとなるとかなり難しい

「だけど」

凛相手にはこれしかない、龍ケ崎は意を決したように迫り来る相手に対峙すると勢いよく走り出し大きくリーチがある刀で凛よりも先に攻撃を仕掛ける。

それを避けさらに間合いを詰めて刀を振り下ろす。しばらく刀同士のぶつかる音が不気味に辺りに響き渡る。龍ケ崎は押され気味に刀で相手の攻撃を防ぐのが精一杯だった。

そんな中で一瞬の隙さえ見せない動きに焦りと作戦を実行するタイミングを見計らう。

終わることのない刀による戦いは時間にすれば3分、いやもっとだろうか。滞りなく続く戦いの中で体力ゲージを微量に減らした龍ケ崎はあることに気付いた

先程から凛は俺の攻撃をわざと受けている。というのも避けることもできる攻撃もわざと刀で受け流しているのだ

どうしてそんなことをするのか、刀を受けるという余計な行動にどんな意味があるのか考えている間にも刀は龍ケ崎に狙いを定め振り下ろされる。どうして、何が目的だ。

わざと、ならどうして。今も振り下ろした攻撃を受け流さず受けた

その瞬間、龍ケ崎の頭の中である閃めきが思い浮かぶ

確信はないが、試してみる価値はある。


龍ケ崎は危険を承知で刀を大きく振り上げた。凛は一瞬驚きはしたが今までどおり自身の刀で受け流す。これまでよりも刀と刀が交わる大きな音があたりに響き渡る。威力は予想以上で凛の体は後ろによろめいた、と同時に体が後ろに倒れる

龍ヶ崎が狙ったように凛はコンクリートに大穴に足を躓いたのだ。

この穴は、先ほどの攻撃で凛自身が開けた穴だ。体制を崩し後ろに倒れる視界の先に龍ヶ崎が刀を振り下ろすのが見えた。

バランスを崩し今まさに敵の攻撃が自身を狙っている。絶体絶命の言葉以外この状況を表せるものはないだろう。

しかし、両者の顔は状況に反していた。絶体絶命の凛は笑い、それを狙う龍ケ崎の顔は険しいものだった。それもそのはず、凛が持っていた刀は最初からフェイクだったのだ

避ければ良い攻撃もどうして刀で受けるのか、それは相手の視線を刀に向けさせるため。

つまり最初から狙っていたのは腰のホルスターにしまっていたハンドガンでの攻撃。

事前に登録できる武器は最大3つまで。事前に持っている武器は消え代わりに口に出した武器が現れる仕組みだ。つまり事前に登録した武器が手元に二つあるというのはおかしいことになる。では、なぜ凛は右手にに刀、左手にハンドガンを持っているのか。

答えは簡単、ハンドガンは最初から存在していたのだ。

あの時、龍ケ崎の銃弾を避けて上空で刀を出した時、てっきりハンドガンを刀に変えたのだと思っていた。実際手元には刀しかなかった。図られた、気づいたときにはもうすでに遅い


凛はバランスを崩しながらもハンドガンの引き金に指をかけて正確に相手の急所を狙う。思った以上に相手は考えていた、出会った時のことを思い出す。

チーム視点から見るのと敵視点からではかなりの違いがある、目の前で銃口を構える一人のメンバーは確実に成長している。それを実感して龍ケ崎は笑みを浮かべた。

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