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「ここ…秋葉原か」

 龍ケ崎は移動した交差点の中心で内海に問いかけた。

と龍ケ崎は目を見開き驚きのあまり地面に腰を打ち付けた。しかし転んだ臀部の痛みよりもその光景の確認の方が優先されるほどだった。それもそのはず先程までドット絵が立っていた場所にはそこには髪が長い女性が立っていたのだ。

「お前、誰だ!」

その問に目の前の女性は退屈そうな顔で長い髪を後ろに結ぶ仕草をしながら龍ケ崎に言い放った。

「よく見てください私です、内海ですよ」

そう言われよく見てみると先ほどのドット絵の特徴と似ていると言えば似ていた。

胸まである黒髪に戦闘服のような格好、腰に付けられたホルスターには黒いハンドガンが装着されている。

「まぁ、これも仮の姿なんですけどね」

そう言うと内海は服を叩いてシワを伸ばすと天へと腕を上げて伸びをした。

龍ケ崎はまさに今起こっている出来事に頭がついていかないといった具合に内海の行動を見ることしかできずに地面に転がっていた。

そんな姿を横目に伸びを終えた内海は一息吐くとに口を開く。

「それじゃあ、この世界について説明しましょうか、といっても話は簡単です。龍ケ崎さんはさっきから起こっている現象に気づいてます?」

「現象?」

龍ケ崎は呆然としながら内海のその言葉につられるように周りを見渡した。

交差点の中心に居座る俺たちを避けるように人々が周りを歩いていて、ビルには巨大な広告看板がいくつも貼られ、店先からは垂れ流しにされている音楽が四方八方から流れている。

それらはどれも秋葉原ではよく見るありふれた光景だと思うが

「ちょっとまてよ…」

龍ケ崎は違和感を覚え、もう一度辺りを見渡しておかしなことに気づいた

「秋葉原にあんな建物何て無かったはずだ」

龍ケ崎が指さした先には大きなビルの大型液晶テレビだった。

ニュース原稿を読むキャスターが映し出されそれを見るために立ち止まる人も視界の端にちらほら確認できる。

「それに、さっきからこんな場所にいるのに誰も見向きもしないのもおかしいだろ」

それを聞いた内海は満足気な顔を浮かべると未だに地面にへたれ込んでいる龍ケ崎に向かって堂々とした口調で言い放った。

「そう、この世界は秋葉原であって秋葉原ではないんです。つまりこの世界というのは仮想空間、要するに作られた世界ってことですね。その規模面積は地球四個分、AR、VR、MR更に最新のAIを搭載したまさに科学の粋を集めた空間、それがこの『SMGF』というVRMMOゲームなんですよ」

その堂々とした口調に龍ケ崎は呆気にとられ一言も言葉を発することはできなかった、というか呆れていた。

「どうです、すごいと思いません?」

「そんな事を急に言われてもな…」

「ここまで言ったんだから分かりませんか?つまり、この世界最高峰のゲームのテストプレイヤーとして世界最高ランクのプレイヤーを招待したんですよ」

内海は招待と誘拐の意味を履き違えてないだろうか。

しかし、一つだけ正しいのはこの世界に俺は連れてこられたということだった。

「どうです、世界最高レベルのゲームを一番最初にプレイできる感想は」

「ああ、最悪だよ、まったく」

「でもプレイしてもらわないといけないんです」

「なんでだよ!?」

龍ケ崎は声を荒げて内海に叫んだ。しかし、当の本人は当然のように答えた。

「ゲームはクリアするまで終われないのが基本でしょう」

辺りを見渡すと人々は俺たちを見ることなく避けて歩いていく。ここにいる全ての物は触れることができ、体温を感じることもできる。

しかし、ここは仮想の世界、目に映るものは全て造られた偽りの世界。

こんな風に人間がゲームに歩み寄ったのはいつからだろう。

思い出してみても龍ケ崎が生まれた時にはまだ仮想空間でのゲームというのは存在しなかった。

ゲーム技術の発展が著しい現代において龍ケ崎の年代はセカンドティーンと呼ばれている。

その意味は今から20年前、その年というのはVR技術が発明され実用化された年だった。

ゲーム『Game Shift 01 (ゲーム・シフト・ワン)』はその革新さ故に世界中で大爆発的に売れ、その中でも特に十代だった子供たちが熱狂的になり、ゲームから抜け出せなくなるまでになってしまう社会問題を引き起こす自体にまでなった。そのことで世間ではその時の十代のことを皮肉まじりにファーストティーンと呼びはじめた。

それから10年後、新たに革新的技術が生み出されたゲーム『Act Frontier War (アクト・フロンティア・ウォー)』通称『AFW』が発売された。このゲームで人類は初めてVRMMO技術を使ったゲームの世界に入ることに成功すると再び社会問題を引き起こすほど人気になり、後に龍ケ崎のように十代だった世代のことをファーストティーンならぬセカンドティーンと言われるようになった。

 そうして今やどこの家庭にもあり生活の一部として存在しているVRMMO技術は当たり前のように存在する。

 しかし、一度はゲームの世界に入り込んだ龍ケ崎もいつしかそのゲームを嫌うようになった。

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