Game Start
「暑い…」
そう言いながら龍ケ崎は携帯の画面を見つめて何かの情報を探すように指をせわしなく動かしていた。
これからどこへ行こうとするのか、フラフラと歩きながら、自販機で飲み物を買おうとしていたそんな折、ズボンのポケットから小銭を出そうとした時だった。携帯に久々に来た一件のメールに気づき龍ケ崎は小銭を入れ取り出し口から吐き出された炭酸飲料を口に運びながら何気なしにそのメールを開いて読み始めた。
件名『ご招待致します』
最初から胡散臭さが出ている。このまま見ないでもいいだろうかと思ったが下に続く本文を読み始める。
『どうも初めまして、私の名前は内海といいます。
ご活躍を知り、あなたは条件にふさわしいプレイヤーだと思いました。ぜひ私が作った新作のゲームに参加しみませんか?』
その文言の最後の行にはURLが貼られていた。
訝しげに目を細めた龍ケ崎は携帯画面の文章をまじまじと見つめながらそのリンクを触れた。
その瞬間、握られた炭酸飲料と携帯は手元を離れ、視界の全ては真っ白になった。正確に言えば龍ケ崎の体は光に包み込まれたのだ。
パニックになり状況を少しでも把握しようと周りを見渡すが目に見えるのは一面真っ白な世界だけだった。
「おいおい、ふざけんなよ」
この世の終わりみたいな声で龍ヶ崎が呆然としていると目の前にうっすらと何かが浮かび上がってきた。
『GAME START』
その文字が現れ下にはタイマーが表示され時間が進むと同時に龍ケ崎の手にはハンドガンが握られると同時に視界のいたるところには複数の的が不規則に動きながら龍ケ崎のもとへと迫ってきた。
「どういうことだよこれ」
龍ケ崎はそう言いながらも手に握られたハンドガンを手馴れた様子で的に向けると躊躇なく引き金を引いた。
放たれる銃弾は不規則に動く的に一直線に向かっていき見事に炸裂した。
と、それを皮切りに的は龍ケ崎に目掛けて銃弾を放った。
「くそッ」
およそ、5つ程の的から放たれる銃弾を避けるように走り抜けながら手に握られたハンドガンの引き金を引いて確実に的の数を減らしていき残り3つほどになった。
龍ケ崎は残った3つの的の軌道を予測すると、急停止して体を大きくひねり、連続して撃ち抜いた。
「なんだよ、これ…」
言いながら目の前のタイマーの数字が55と表示されるのを見つめる。その時だった、後方に視線を感じて振り返った。
「やはり、あなたは私のゲームにふさわしいプレイヤーだとお見受けします」
その声に龍ケ崎は言葉にならない声で驚いた。
「すみません脅かすような真似をして」
そんな声の方向をよく見てみると目の前に浮かんできたのはなんとも懐かしいドット絵のちっこいキャラクターだった。
「早速ですがこの世界について説明させていただきますね」
一方的に内海と名乗ったドット絵は1人で話し出す。龍ケ崎はすかさず言葉を挟んだ
「ちょっとまて、まず始めにお前は誰だ」
龍ケ崎は白い世界の中で一つだけ色を持つ目の前のドット絵の人物に問いかけるがその人物、もといドット絵ながら不思議な表情を浮かべるとさも当然のように答えた。
「私はあなたにメールを送った内海です」
「はぁ…」
メールを送ったのがこんなドット絵だった事に驚きつつ、龍ケ崎は冷静にもう一つの質問をする。
「で、これはなんだ」
「なんだって言われても…メールに書いてあった通りのゲームですけど?」
答えになっていないその言葉に、龍ケ崎はもう一度辺りを見渡してみる。
しかし、そこにあるのは一面まっしろな空間だった。
「ゲームってさっきのがか?」
「いえ、先ほどのはいわゆる前哨戦みたいなもの。実力を試させてもらったんです」
「そんな事して何をしたいんだ」
「だからこれから説明をしようと思ってたんですって」
内海の声色が怒った口調に変わったことで、龍ヶ崎は湧いてくる怒りの感情を抑えて少しは聞いてやろうと黙ることにした。
「それじゃあ、まず初めにこのゲームについて、このゲームは私が開発したものです」
内海がそう言うと目の前の白い背景から「SMGF」という文字が出てきた。
「『SMGF』これってつまり何のゲームなんだ?」
「『Sword(ソード)・Magic(マジック)・Gun(ガン)・Frontier(フロンティア)略してSMGF』その名のとおり様々なジャンルを組み合わせたVRMMOFPSゲームです」
内海はそう言うと龍ケ崎の体はまたしても白い光に包まれた、目も開けられないほどの光が体を覆い反射的に腕で目を隠すがそれは一瞬の出来事だった。
次の瞬間には白い空間から太陽の光が肌に当たるのを感じる場所に立っていた。
「おい、移動するなら先に言ってくれよ…」
突然の光に包まれぼんやりとした視界の中、龍ケ崎は腕をどけて周りを見渡した。
辺りには溢れんばかりの人混みが右に左にと行きかっており、それを囲うように高い建物が連なり、さらにぐるりと回って後ろを見ると電車が丁度、橋の上を走行している。
直感でこの風景見たことがあると龍ケ崎は感じた。
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