第32話

12月の中旬。

朝から雨が降っていて寒い。

憂鬱だ。冬で雨が降ってくるなんて、最悪だ。

黒い雨雲で辺りは暗い。

教室内はどんよりしている。元気がない。


午前中の授業が終わり、少し賑やかになる。

伸びをする男子生徒の姿や机をくっつけて昼食を食べ始める女子グループの姿をみる。

私も昼食を食べ始める。


午後の授業が終わり、帰る支度をして鞄を肩に提げて教室を出る。

廊下を歩いていると波暮君に会って挨拶をかわす。

「波暮君、もう帰るんだね」

「やあ、やっはろー。雨下先輩。珍しいですね。先輩の方から声をかけてくれるなんて」

「考えてみればそうだね。なんか暗いのを感じて、ってね」

いつもの挨拶も元気がない波暮君。

何かあったのかな。

「あのっ、クリスマスの日って空いてますか」

ふりしぼった声に聞こえた。

「うん。空いてるよ、クリスマス」

「そうですか。良かった」

ほっとしたようで息を吐き出す。

こっちはよくないんだけどなあ。

階段を下りて、昇降口でスリッパを下駄箱に入れて靴を取りだし履き、波暮君と並んで傘を差す。

まっすぐ家に帰る私達。

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