11.血潮はエゴで、心は憎悪

 FGOは、最高のキャラと、最高のシナリオが用意されたRPGです。

 そこに、疑う余地はありません。

 キャラもシナリオも凡庸ぼんようだったら、ここまで俺は苦しまなくて済んだんです。ただクソゲーだなと思って、そのことを誰にも伝えず心に閉じ込め、ゲームをアンインストールすればよかったんです。

 でも、あまりにもFGOは素晴らし過ぎる。

 そして、そのキャラとシナリオに対して、ゲーム部分が低レベル過ぎる。

 俺個人はそう思っています。

 そう思う俺が軽蔑けいべつされ忌避きひされることも、今もうすでに恐れていません。

 FGOが好きな方は、思う存分に楽しんで、面白さを体感して下さい。

 それは俺にはもう、できません。

 俺にとってFGOは、苦しみであり辛さであり、憎しみの対象です。




 FGOには、期間限定で開催されるイベントクエストというものがあります。人理を守るメインシナリオの戦いとは別に、番外編とでもいうべきシナリオが用意されているのだ。

 イベントでは、主人公たちは同人誌を作ったり、レースをしたりします。

 とてもシリアスで深刻なメインシナリオとは、かけ離れた物語。

 そこでは、普段は見れないキャラクターたちの笑顔や、意外な一面がある。

 FGOというゲームにおける、醍醐味だいごみの一つだと思う。


 だが、FGO

 これは俺だけが思ってることで、俺自身の個人的見解です。

 FGO

 イベントクエストに参加できるユーザーを、時々『』と制限しているのだ。何故なぜ? わからない。俺には、意味がわからない。ただ、単純に『あまりプレイヤーに得をして欲しくない』としか、解釈できない。イベントクエストは、一種のお祭りである。だが、イベントクエストは多くの場合、聖杯が手に入る。聖杯は、このゲームで誰もがほしいと思う最高級のレアアイテムだ。のみならず、普段は収集が困難なアイテムが多数手に入る。どれも、サーヴァントのレベルやスキルを上げるために必要なアイテムだ。

 イベントクエストは、参加する者にもの凄い富を与える。

 そして、そのイベントクエストに、運営側は制限をかけて一部のユーザーを拒絶している。


 これに対して『一部のキャラクターがネタバレになってしまうため、一定以上のシナリオを進めたプレイヤーだけを参加させている』とする意見がある。だが、1.5部の新宿のアーチャーやらアーチャー・インフェルノやらのガバガバっぷりを見れば、それが理由ではないことは明らかだ。モリアーティ教授や巴御前ともえごぜんは、1.5部を知らないプレイヤーに対して、突然運営の都合で情報開示されたのだ。

 物語のネタバレを防ぐために、というのは、一部のプレイヤーをイベントクエストから締め出す理由としては成立していない。


 次に『こうして制限しないと、イベントクエストだけを遊ぶ奴が出てくる』という声がある。では問おう……? メインシナリオを全く遊ばず、イベントクエストだけをやる人間のなにが悪いのか! それってつまり『俺の書いたメインシナリオを読ませたいから、読まないやつに損させるわ』って言ってるようなもんだよね。事実、俺はそれに苦しめられた。イベントに参加したいのに、メインシナリオがまだまだ未クリアだったから、強行軍をいられた。

 やっぱり『』を、FGOの運営が突きつけてくるものなのだ。

 俺は、でも頑張ってメインシナリオを進めた。

 地獄だった、全く面白くなかった。

 素晴らしいシナリオが『強制的に苦戦を強いられる』という中で、楽しめなかった。

 いい話だとわかる、頭では理解できる……ただ、心で感じる余裕がなかった。




 何故、イベントクエストを全てのプレイヤーに解放しないのか? どうして、聖杯と沢山の素材アイテムを、なかば配布という形で与えることに躊躇ちゅうちょするのか。俺にはさっぱりわからない! 俺はネトゲを長らく遊んできた人間だが、イベントクエストっていうのはお祭りなんだよ。俺が知る限り、厳しい参加条件のあるイベントクエストなんて、ネトゲにはなかった。祭りとは、非日常の発散、特別な時間を過ごす楽しさだ。

 一部の人間を排除する祭は、祭ではない。

 つまり、FGO

 イベントというえさで『おめーら、メインシナリオ遊べやクソが!』という、柔らかな脅迫きょうはくなのだ。俺はそう思った。お祭りではなく、餌をぶら下げた強制強行軍なのだ。


 俺はでも、イベントクエストに参加したくて、シナリオを頑張った。毎日のAPを全て注いで、リンゴも食った。敵が強くて、第二部に入ってからはイライラの連続だった。そして、そんな俺のフラストレーションが頂点に達したのは、第二部第二章ゲッテルデメルングだ。

 この章では、ディストピアとして完成した『本来の人理にはない、淘汰とうたされて然るべき人間の歴史』が繰り広げられている。そこでは、北欧神話の神が人間を管理し、家畜のような暮らしを敷いているという世界だった。主人公たちは、このいびつな世界を駆逐し、本来の人間の歴史を取り戻すために戦う。

 だが、この間違った世界のラスボスには、北欧神話における炎の魔神スルトが暗躍していたのだ。スルトとの最終決戦を、プレイヤーは戦うことになる、のだが……あろうことかこの最終決戦は『使使』という、憤慨ふんがいすべき理不尽に対峙することになる。


 どんなゲームでも、相手に対して最善の状態で挑むことが常識だ。その準備が楽しくて、自分なりの最善をぶつけて結果を得ることが喜びなのだ。それがゲームというものなのだ。だが、ここで俺は常に頼ってきた『フレンドが貸してくれるサーヴァント』を封じられた。大ボスとの大一番で、俺は『クラス的にも有利ではなく、礼装すら装備してない上に、キャラとして大嫌いなシグルド』を押し付けられたのだ。このシグルドが、弱い! 当たり前だが、彼はセイバーで、相手はセイバーが弱点のランサーではない。邪魔だ。はっきしいって、足手まといだ。だが、彼は俺の脚を引っ張りつつ、俺が本来得られるべきフレンドの援護を邪魔したのだ。

 許せない、憎い。

 恨めしい、殺したい。

 絶対に引いても使わない、レアプリにくべようと誓った。

 当たり前だが、スルトとの戦いで令呪れいじゅと聖晶石を消耗させられた。

 俺は、FGOプレイ前からアニメでFateシリーズを見ている。令呪っていうのは、そう簡単に使ってはいけないものだ。それを使わされるのは、屈辱くつじょくだ。俺が自分の意思で、サーヴァントを信じて使うなら、令呪は使ってもいい。だが、見ず知らずの邪魔者のせいで、使のは苦痛以外のなにものでもない。




 だが、メインシナリオを進めないと遊べないイベントがあった。聖杯を逃がすわけにはいかない、聖杯は『あらゆるサーヴァントが最強になれるかもしれない可能性のアイテム』だからだ。実際には、低レアのサーヴァントは聖杯をつぎ込んでも最強にはなれない。だが、確実に限界を超えた強さを手にできる。

 そういう、プレイヤーなら誰もが欲しいアイテムを、運営側は出ししぶる。

 色々な建前で理論武装して、プレイヤーに渡したくないと思っている。

 それでも、そんな汚い運営のルールに従うため、俺は急いでメインシナリオをクリアした。苦しくて辛くて、地獄だった。これも聖杯のためと、いやいやながら令呪や聖晶石を使った。許せない、これがFGOの本質なのだといきどおった。

 シグルドは本当に嫌で、大嫌いなサーヴァントだった。

 俺が好きなのは、ニーベルンゲンの歌に出てくる、ジークフリートだ。

 同じ人物と言われているが、シグルドは大嫌いだ。

 でも、シグルドには妻ブリュンヒルデがいる。

 ジークフリードの妻、クリームヒルトはいない。


 でも、こうやって苦労してようやく、オニキュアとオニランドのイベントクエストを遊ぶことができた。苦労した甲斐かいがあって、とても面白いイベントだった。やっぱり、イベントは面白い、楽しい。そして、イベントのラスボス前では、まさかまさかのジークフリートとシグルドの共闘、協力攻撃が見られた。二人は共に竜殺しの英雄、戦士として相手に敬意を感じていた。

 だから、シグルドも許した。

 きっと引けたら、大事に使うと思う。

 俺の好きな大英雄ジークフリートが、戦友と認めたのだ。俺は、ジークフリートが悲しむようなことをしてはいけない。二人が共に仲良く戦える、一緒にくつわを並べて人理を守れる日々を守らなければいけないと思った。


 まあ、俺は大好きだけどジークフリートまだ引けてないんだけどな!(笑)

 次の☆4配布、絶対にジークフリートをもらう!

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