第21話 天気の話

「あの……」

「なんだよ」


「なんで邪魔すんだよ」

「いつものことだろ」


「たまにはハッキリ見たかったんだって」

「そんなこと言われてもなぁ……」


「お前、いつもそうだよな」

「俺だって頼まれてやってるんだよ」


「誰に?」

「わかるだろ」


「わからないよ」

「”ハッキリ見られたくない”って思ってる人にだよ」


「あー……」

「わかっただろ。諦めろ」


「それでもたまにはさぁ……」

「二人の邪魔になるだろ」


「みんな知ってることなんだから、見せつけてやればいいのに」

「それを決めるのは本人たちだよ」


「はぁ……わかった。あきらめる」

「まぁ、ブルーレイではちゃんと見えるぞ」


「なんだよそれ?」

「いや、あの二人って毎年、映像売ってるんだよ」


「……信じられねぇ」

「いや、全年齢な内容だよ? 仲良く喋ってる感じ」


「それ、売れるの?」

「隠されてると観たくなるからな」


「お前……まさか、そのために?」

「まぁ、少しだけ、分け前もらってる」


「くそ……そんな理由で……」

「とは言え、邪魔されたくない、ってのも事実だぞ?」


「納得いかないよ」

「年に一回のデートだ。気を遣ってやっても良いだろ?」


雲の下から空を見上げる土地神様と

雲を操る雨神様のそんなやり取り。


そういう訳で、七夕の夜はたいてい曇る。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る