第16話 ありがちなゾンビ物の話
世界中で同時期に、死者の起き上がり現象が起こった。
いわゆる、ゾンビである。
彼らは腐った体で
緩慢な動作で人を襲った。
世界にパニックが広がり、大規模な戦闘が起きた。
多くの人が死に、彼らも起き上がり、戦いは延々と続いた。
しかし、それもようやく終わりを迎える。
ここは、とあるショッピングモール。
立てこもった者たちが相談している。
「俺たちで、最後らしい」
「そうか。ここがやられたら、もう全滅か」
ショッピングモールの外から、大量の足音が聞こえる。
「あいつら、また来るつもりだ」
「そうみたいだな。外に集まっているみたいだ」
「いよいよ、おしまいだな」
「こうなったら、最後まで足掻いてみるさ」
「それにしても、なんだってわざわざ襲ってくるんだろうな」
「自分と違う物を、敵だと思うようにできてるんだろ」
「そんなもんかね? だって、同じ人間だろ?」
「人間ってのはそういうもんだろ」
「そうかもな」
「言葉も通じない。見た目も違う」
「それで、殺し合いかよ」
「歴史の教科書読めば、”どこでも起きてることだ”って書いてあるだろ」
「あーあ、やってらんねぇよ」
「まったくだ」
「今から”人類皆兄弟”って書いたプラカードでも作ってみるか?」
「やめとけ、盾にもなりゃしない」
「バリケードの材料にした方がマシだな」
「それに、あいつらが読める字なんて書けねぇだろ」
「つーかさ」
「なんだよ」
「最初の一人が殺し合いをしなかったら……って思うことない?」
「はぁ? 向こうから襲ってきたって話だぞ?」
「そうらしいな……でもさ。
最初に上手く行ってりゃ、
そういうこともできただろうにな」
「言いたいことはわかるけどよ。
そんなに上手く行くかよ。身体は腐ってる。言葉は通じない
唸り声上げてフラフラ歩く。どう見てもバケモノだろ」
「そうかねぇ……」
「……そうなってるだろ」
「俺さ、ゾンビが”人を襲った”って言われてるの、勘違いだと思うんだ」
「何をどう勘違いするんだよ」
「きっとさ。”ハグ”したかったんじゃないかなって」
「ロマンティック過ぎる妄想だな」
「でも、わかるだろ?」
「わかるさ」
「こんな身体でも、もう一度温もりを感じたいよな」
「そうだな……死ぬ前にもう一度」
「まったく、二度目だってのに慣れねぇな」
「死ぬのに慣れてたまるかっての」
二人のゾンビが笑い合う。
人類の勝利は近い。
終
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