第3話 調査開始

 謎ときをしようとは決めたものの本当に大丈夫なのか。この学校内に2人黒い人がいて、見つかれば殺されてしまう。謎を解く前に全員殺されてしまう可能性も十分ある。こんな難しい状況で本当に解くことができるのだろうか。不安になっている私に気づいたのか優香が、

「大丈夫! 絶対ここから出れる! だから元気出しな」

 と、私を励ましてくれた。そうだ、今から弱気になってどうするんだ。みんなで脱出するためにもっとしっかりしなきゃ。

「まず何処から探す? 」

 私はみんなに聞いた。口を開くだけで血の匂いがする。取り敢えず早くこの部屋から出たい。

「そうだな……。まず早くここの部屋を調べてしまおう。こんな所ずっと居たくないしな」

 そう答えたのは貴大だった。

「は? 冗談じゃねぇよ。こんな所さっさと出ようぜ」

 海斗が私達を睨みながら言ってきた。そんなこと言うんだったら勝手に1人で出ればいいのに。私達だって好きでこんなことをやってるわけじゃない。

「ここに何か手掛かりがあるかもしれないでしょ? あんた馬鹿なの? その脳みそでしっかり考えれば? 」

「なんだと!? 」

 言い返した優香に海斗が殴りかかろうとした。なんでこんなことになるの……。

「やめてよ! 私達だって好きでこんなことやってる訳じゃないの!! ここを出る為だから仕方ないでしょ? 」

 私は海斗に向かって叫んだ。ほんと、こんな時にやめようよ……。

「だから、みんなで協力して探そうよ」

 私のその言葉で海斗の動きが止まった。

「そうだね、成美の言う通りだよ。今は手掛かりを探すことに集中しよう」

 そう言ったのは七海だった。みんなは驚いた顔で七海を見た。

「なによ」

 七海は私達を睨みながら言った。いや、七海がそんなことを言うのは意外で……。まぁ、そんなこと言えるわけないけど。

「いや、別に……。じゃあ探すか! 」

 貴大が言って私達はこのクラスを調べ始めた。あちらこちらに血が飛び散っていて触れると生温い感触がした。できるだけ息を止め、ロッカーの中や机の中など隅々まで調べた。

「どうだ? 何かあったか? 」

 その貴大の問いにみんなは首を横に振った。

「そっか……。じゃあ次は隣の教室だな」

 貴大が言い、みんなは隣の教室に移動した。と、私達は隣の教室を見て動きが止まった。この教室はさっきの教室と違って血の跡がひとつもなく、人1人すらいなかった。

「おい、どういうことだよ。誰もいないじゃねぇかよ」

 そう口を開いたのは悠斗だった。本当に妙だ。一体みんなはどこにいったのだろいか。

「もしかして、みんな何処かに消されたのかな? 」

 凛音が不安そうに言う。でもそれも有り得るかもしれない。だって血の跡も無く、人がいないなんておかしすぎる。

「取り敢えず早くこの教室も調べようぜ。あいつらがいつ来るか分かんねぇし」

 悠斗の言う通り、あの黒い服を着た人がいつ来るか分からない。私達は教室に入り調べ始めた。だが、この教室にも手掛かりはなかった。

「くそ、一体何処にあるんだよ!! 」

 悠斗がいきなり声を荒らげたと思ったら椅子を持ち、窓を叩き始めた。

「ちょっと何やってるのよ! 」

 優香が叫んだがそれでも悠斗はやめようとしない。

「何って、ここから出るに決まってんだろ! こんな所でぐずぐずしてられっかよ! 」

 そう言ってまた窓を叩き始めた。

「おい! そんなことしたらあいつらに場所がバレるだろ!! 」

 貴大がそう言った時だった。廊下の奥から音が聞こえてきた。

「ちょっと静かに! 」

 私はみんなに言って、机の陰に身を潜めて耳をすました。


 ギギギギギギ…………。


 かまを引きずった音がどんどんこちらに近ずいてきていた。

「どうしよう、来てるよ……」

 七海が不安そうに言った。どうしよう……。反対側に逃げたとしてもすぐ行き止まりになってしまう。一体どうすればいいの?

「よし、あいつがここに入ってきたらみんな一斉にこの教室から出て二手に別れて逃げるんだ」

 貴大が小声でみんなに言った。

「でもどうやって逃げ切るんだよ。みんな一斉に出たら殺されるんじゃないか? 」

 海斗が言った。確かにみんなで一斉に出た瞬間黒い人はこちらに襲ってくるのではないか。

「俺に考えがある」

 貴大のその言葉にみんなはこちらを向いた。

「どうするんだよ」

 悠斗が聞いて貴大は言った。

「ここは教室だから机とか椅子がいっぱいあるだろ? それを倒していって道を塞いで少しでも時間を稼ぐんだ。その後は二手に別れて逃げよう」

 確かにその方法なら少しぐらい時間を稼げるかもしれない。みんなは貴大の意見に頷いた。黒い人はもうすぐそこまで来ていた。心臓が嫌な音をたてた。教室の扉が勢いよく開いた。そこから黒い服を着た人が入ってきて辺りをきょろきょろして私達を探しているようだった。今だ────。

「行くぞ!! 」

 その貴大の言葉に私達は一斉に飛び出した。その瞬間黒い人がものすごいスピードでこちらに来た。私達は椅子と机を全て倒して道を塞ぎ黒い人が戸惑っている間に教室から出て走って逃げた─────。



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