第2話 恐怖の始まり

 キーンコーンカーンコーン────。

 6限目が終わり、私は席に座ったまま大きく背伸びをした。あとSHRが終わって帰るだけだ。それにしても今日は何だかとても疲れた。それもこれもあんな夢を見たせいだ。家に帰ってテレビでも見ながらゴロゴロしよう。そう思っていた時だった──。突然学校の電気が全て消え、辺りは真っ暗になった。

「え、ちょっとやだ、どうなってるの? 」

「なんだ? 停電か? 」

 クラス内、いや学校中の生徒が不審に思いざわつき始めた。

「成美、大丈夫か? 」

 そう言って駆けつけてくれたのは優香と貴大だった。

「大丈夫。それにしてもいきなりどうしたのかな」

「どうせ停電でしょ? ほんっとこの学校ボロいんだから」

「大丈夫だって。すぐ元に戻るさ」

 そう言って貴大はキレ気味の優香に優しく言った。と、その時、教室のドアが勢いよく開いた。クラス内は静まりかえり、その開いたドアから黒い服を着てお面を付け、大きなかまを引きずった妙な人が次々と入ってきた。そう、それは今日夢に出てきた黒い服を着た人物と同じだった。

「な、何よ、これ……」

「一体どうなってるんだよ……」

 恐らく優香と貴大も気づいたであろう、その顔は恐怖に満ちていた。そして、1人の黒い人が合図を出した。その瞬間、クラスの人達が次々と殺されていった。クラス内は大パニック。逃げようとする生徒達全員を持っていたかまで切り殺していった。私達は恐怖でどうすることも出来なかった。私も殺されるんだ。そう覚悟を決めた時だった。黒い人達は攻撃をやめ、私達の周りを輪になって囲んだ。周りを見渡すと教室の壁や天井は真っ赤に染められており、床は辺り一面血の海が広がっていた。私はその場で嘔吐した。その中で生き残っていたのは私の他に優香と貴大、クラスメイトの悠斗ゆうと七海ななみ凜音りんね海斗かいとだった。確かこの人達はクラスでも有名な乱暴グループだ。

「なんなんだよ、こいつらは」

 そう言ったのは海斗だった。と、その時、突然校内放送が流れた。

『やあ、みなさん、こんにちは』

 その声は低く、笑いながら話しているようだった。

「『こんにちは』じゃねぇよ!てめぇ誰なんだ! なんでこんなことするんだよ!! 」

 そう言ったのは悠斗だった。

『ふっふっふ。随分乱暴な言い方ですね。まぁ、いいでしょう』

 そう言ってその声は続けた。

『君達には今からゲームをしてもらいたいと思います』

 ゲーム……。私はとてつもなく嫌な予感がした。

『君達にはある2つの謎を解いてもらいます。まず1つ目は私の正体、2つ目はなぜこのような事が起きたのか。ただし、この学校からは出ることが出来ません』

「は? 何よそれ。そんな面倒いことせずにさっさとここから出してよ! 」

 そう叫んだのは凜音だった。そしてその声は凜音の言うことを無視して続けた。

『ルールは簡単。その2つの謎を解くことが出来たらこの学校から出してあげます。ただし、この学校内に私の部下2人を配置し、もしその部下に見つかればその人は殺されます。また、謎を解くことが出来なくても全員殺されます』

 なに、どういうこと? 一気に情報が入ってきて私はもうどういう事なのか理解することが出来なかった。

「どうしてこんなことするのよ! それくらい教えてくれたっていいでしょ! 」

 優香は必死に叫んだ。私も同感だった。それくらい教えてくれたってなんの損も無いじゃない。

『いいえ、それは出来ません。それはあなた達が解くことです。制限時間はありません。どうぞごゆっくりお考え下さい』

 そう言うと放送は途絶え、周りにいた黒い人達も消えていた。


 教室に取り残された私達は誰も話さず、ただ時間だけが過ぎていった。

「おい、これからどうする? 」

 最初に口を開いたのは貴大だった。

「そんなの知るかよ! くそ、なんなんだよあいつは! 」

 海斗は私たちに向かって言った。

「そんなの私達が知りたいわよ! 」

 優香も負けじと言い返した。

「くそっ! 」

 そう言いながら海斗は床を強く叩いた。

「2つの謎を解かないと出れないんだよね? 」

 このままではいけないと思い私は言った。もしかしたら連絡ができるかもと思いスマホの電源を付けると圏外になっていた。

「そうだな。ここ圏外になってるし、それしか方法は無さそうだな」

 貴大もスマホを開いて確認して言った。

「そんなのどうやって解けっていうのよ! 」

 七海は私達を睨みながら言った。そんなの私だって知らないわよ……。

「学校から出れないってことはこの校内にヒントがあるかもしれないってことでしょ? だったら一つ一つ部屋を調べるしかないよね」

 そう言う優香の意見に私は頷いた。

「ちっ、結局調べないといけないのかよ」

 悠斗は少しイラついた口調で言った。

「でも危ないからみんなで固まって探そう」

 その貴大の言葉で私達の謎解きは始まった。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る