汚染された中でも、血は赤い

綺麗な真っ白い素肌に、一筋の赫い線が出来た。

「っ、切れた。」

その赫い線の端に同じ色をした真ん丸の玉が出来て、指を伝って落ちた。

「痛い、痛い。マジで痛い。」

「大丈夫か?絆創膏あったかな、…あ!」

切った指を口に入れた途端、部屋中の明かりが全て一斉に消えた。真っ暗な空間で声だけがやけに大きく聞こえる。

「うわ、今日って計画停電の日だったっけ。失敗したあ。懐中電灯どこ?つか、絆創膏ってどこだっけ?」

「あー…と、懐中電灯はテレビの棚の上で……絆創膏は、救急箱の中。」

「救急箱ってどこ?」

「…忘れたわ。」

口の中にじんわりと鉄の味がしてくる。大事な鉄分が逃げていく。だけど出ていく側から舐めてたら、吸収されてる…?

「のか?」

「救急箱ないー!」

「…そういや、今朝姉ちゃんが持って行ったんだ。」

「まーじ?」

怪我なんてしねーよ、とか訳わかんないこと言ったような気がしたな。確かにここ数ヵ月救急箱なんて触りもしなかったのに、こんな時にかぎって包丁なんて使うからだ。

「お前が、ラーメンにハム入れたいなんて言うからだぞ!」

「は?俺のせいかよ?こんな必死に懐中電灯で救急箱探してやってる友人に向かってなんてことを!」

「うるせーよ!いいから、絆創膏買ってこい!出血多量で死ぬわ!」

「ぅへー…」

わかったんだか、そうじゃないんだか曖昧な返事をするとのそのそと防護服を着た。

「雨なんて降ってないだろう?」

「いーだろーが!念のためだよ!」

大きく叫んで飛び出した窓から見えた空には、なるほど確かに雨雲があった。

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