第3話  墓場まで

「わー。超普通」

あわてて階段を駆け上がる。


「まーちゃん」

「あっ、まーくん。本当に普通だね。個性が無さ過ぎるよ」

「悪かったな。」

「コレクションとかないの?」

「ない」

「つまんないね」

本来なら、むかつく発言だが、元気なようで安心した。


「あっ、ここ押し入れだよね」

「そうだよ」

「開けていい?」

「だめ」

「いいや、開けちゃおう」

こら、犯罪だぞ。

という間もなく・・・


「あっ、これ・・・」

見つかってしまった。


「かわいいぬいぐるみがたくさん。でも、私の知らないキャラばかり」

「当然だよ」

「どうして?」

「僕のオリジナルキャラクターだから」


しばしの沈黙があった。


「すごーい。夢を叶えたんだね」

「そんな、大袈裟なものでもないよ」


自分のオリジナルキャラクターをぬいぐるみにしてもらう。

そういう夢があると、まーちゃんに言ったことがある。


「いくらで売ってるの?」

「500円」

「どこで?」

「ネット」

「見せて」


まーちゃんに言われて、自分のサイトにアクセスする。


「ここだよ」

「あっ、たくさん売れてるね」

「まあ、始めたばかりだけどね」


そう始めたばかり、これからが勝負だ。


「まーちゃん、今日は・・・」

「ごめん。もう帰るし会う事はないわ」

「そっか・・・」

「ごめんね。約束果たせなくて」

約束と言うのは、お嫁にもらってくれという事だろう。


最初から、それは頭になかった。


「じゃあ、最後に妹に会ってやってくれ」

「妹?ああゆうこちゃんね。さっき、挨拶したよ」

「そっか・・・」


まーちゃんは、母にお辞儀をして、帰っていた。

僕はそれを、柱の陰から見送った。


そう、あの時のよに・・・


≪まやお姉ちゃん≫

≪ゆうこちゃん?会ってきたよ。まーくんに≫

≪お兄ちゃん、凄いでしょ?≫

≪うん、見なおしたよ。すごくたくましくなってた≫

≪そう?優しいけど、貧相だよ。≫

≪体がじゃなく、心が・・・≫


まーちゃんと、ゆうこが、そのような会話をしているのを知るのは、

かなり、後の事。


僕は今、振り返ってはならない。

今は、歩き続けよう。


いつか、未来よりも過去が長くなった時、

その時に会いに行こう。


初恋の女のところへ・・・

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宝箱 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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