第25話 疑惑(その2)
「俺たちはその気になったら、いつでもここから出て行きますよ。無実なんだから。村の人たちにひどい目に
まあまあ、まあまあと言ってセイルはごまかそうとした。村長の
「あった」
「あったんだ」
扉を開けたセイルに報告がなされた。
「金が見つかりました」
「どういうことだ」
「あいつ、テシターが持っていました。あいつは自分が金を保管していたのをすっかり忘れていたと言っています。てっきり村の
「二万コマ、あったか?」
「ありました」
村長は
「テシターは悪くねえ」
「金はあったんだ。よかった」
「よかったよかった」
「『
レノーはそれ以上聞いていなかった。ペタリンたちの所に戻り、
「レジー、待ってくれ。今夜は私の家に泊まって行け。彼女も、フェミも来るんだろう?
私は彼女の友だちだ。ドブシャリは外に寝かせればいい。話したいことがある」
俺たちには話すことなんかありません、とレノーは
「ヨサだって私の友だちなんだぞ」
「残念だけど」
レノーの言葉を別の声が引き継いだ。
「あなたが友だちだなんて、思っていませんよ、村長さん」
アルルとクルルがきゅるきゅる言いながら声の
「ヨサ母さんをひどい目に
「おお、フェミじゃないか。よく来たな」
セイルが引きつった笑顔でフェミに近づいて行った。彼女はしかし落ち着いていて、そのまなざしはあくまでも温かかった。
「さっき村の人に聞きました。レジーを
「
「自分の家に
「待て、待て。君たちに話がある」
「レジー、セイルはね、前にヨサ母さんとあたしをたらしこもうとしたことがあるのよ。
「フェミ、この村長さんは何かをたくらんでいるようだ。気をつけろ」
セイルは心外だというような態度でフェミとレノーを怒鳴りつけた。
「何をばかなことを言ってるんだ!
フェミにはすこしも
「この人はいつでも弱いものに
村長はくだらなさそうに大きな笑い声を上げた。
「私はいつも人のためになることをやっている。この連中は頭がおかしい」
村人たちがそうだぞとか、村長をばかにするなとか、この村をばかにするなとか、いかれたガキどもが
「セイルは母さんを
セイルは大声で叫んだ。
「ドブシャリを連れた頭のおかしな子供たちだ! こんな連中の話をまともに聞くんじゃないぞ、皆!」
村人たちはもちろん村長の言うことを聞いた。いや、フェミの話に耳を
「あたしはセイルに
どよめき、沈黙。また別の娘も言った。
「あたしは村長にやられそうになった」
「待て、皆聞け! 皆なにかかんちがいを……!」
レノーはフェミの手を取って街道に向けて歩き出した。アルルとクルルが後ろからついて来る。
「まあ、こんなもんだろ」
フェミはレノーがセイルに何か弱みを
俺はだいじょうぶ、クフィーニスであることも知られていないと彼が言うと、彼女はほっとしたようだった。彼は彼女に
「そんなこと気にしてないよ。レノーたちに必要なお金だったんだから」
クルルが紙切れをフェミに渡した。
『あたしたち、焼き肉をいっぱい食べたの。それはそれはおいしかったのよ』
こうしてみるとクルルはかわいい女の子なのね、と言ってフェミはクルルの頭を
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