第23話 ウダツ(その2)
三人は朝まででも店の椅子に座っていたかったが、突き出た腹を抱えて表に出た。満ち足りたような、だまされたような気持ちである。しかし気分が悪いはずがなかった。ふらふらと
「うまかったなぁ」
くーくー。荷をほどいて毛布を取り出したところを、たくさんの村人たちに囲まれた。
「こいつらか」
「こいつらだ」
「コソ
? 三人は何か起きたかなぁくらいのつもりでいた。
「コソ
走り去る者、走り寄る者。
(もしかして。コソ
大人の男たちが集まって来る。後ろの方に女や子供が混じっている。何があったんですか、と
「
「何があったんですか?」
「とぼけるな!
「冗談じゃない。自分たちの金で食べたんだ!」
「信用ならねえ」
「信用ならねえ」
「うそだ」
「お前たち、どこのだれだ?」
なんだか
(なんて答えたらいいのだろう?)
仕方なく、俺には連れがいて、やがて追いつくはずだ、その娘はムネという町の花屋に勤めていたフェミという名前の子だ。俺は大道芸をしているレジーと
「レジーか。何で金を盗んだ?」
何を言っているかレノーにはわからなかった。
「いいがかりはよしてくれ」
しかし村人たちはこちらの言うことなど聞いてはいない。
「どこへ行くんだ」
「そのフェミという子の母親に会いに行く」
「信用ならねえ。野宿するような大道芸人がなぜ
「この村に来るずっと前から持っていた金だ」
「うそだ。だまされるな」
レノーはこの危険な状況の中で
「
とうとう大声を上げてしまった。
「なんだやるか
「顔を
「
(この連中には話を聞く気なんかないんだ)
レノーは
☆★☆
「
年配の男の声がした。
「レジーと言ったな。夕方に、この村で
「なくなったんですね」
「君たちが来てからのことなんだ。何か心当たりはあるかな?」
いいえ、とレノーは答えた。
(慎重にならなければ)
「俺が持っていたのは八百コマほどです」
「うそつけ」
と誰かが言った。
「荷物を調べさせてもらう」
「どうぞ。ただ、手紙だけはダメです」
セイルは村人たちと一緒になって、レノーの荷物を全部調べた。手紙はレノーが持っている。
「その手紙、本当に手紙だけか?」
レノーは手紙を取り出すと封筒を渡し、手紙を開くと読めないように素早く振ってみせた。すぐに返してもらった封筒にしまう。
「ところでさっきの君の話なんだが……花屋の娘の名前をもう一度教えてくれるか」
「ムネの町にいたフェミだ」
「その母親の名は?」
「ヨサ」
「フェミはこの村に来るのか?」
今夜か、明日にもこの村に着くだろう。レノーたち三人はこの村で彼女を待つつもりだった。レノーはそう答えた。
「フェミを知っているんですか?」
「ヨサは私の友だちだ。娘のフェミも知っている。ムネの町でフェミが賞金を受け取ったこともだ。君は彼女から金をもらったか?」
「そうです。『
二人を見守っていた連中が、信用ならねえ、信じちゃだめだ、だまされるな、と口々に叫んだ。
「皆聞け。いいか、この子は盗んでいない。私が保証する。しかしいまこの子たちを村から出しもしない。この子の話が本当なら、私の知っている娘がこの村に来るだろう。その子に
男はレノーに向かって、村長のセイルだ、安心しろ、だが私の家に来てもらうぞ、と小声で命じた。従わないわけにはいかなかった。
村人たちはレノーと哀れなドブシャリたちを囲んでセイルの家までついて来た。まだレノーたちを疑っている者が大半で、うそだったら袋叩きだとかドブシャリを丸焼きにしてやるとかぶつぶつ言っている奴までいた。
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