第22話 ウダツ(その1)
(カヌウはまたどこかにクフィーニスの村があるのではないかとも疑っていた。そんなものがあったとしたら、どうして世界はいまクフィーニスのものになっていないんだ? だからきっとそんな村はないんだ)
つくづく自分は
『あたしたちが言ってた通りでしょう?』
クルルが話しかけて来た。
『都へ行くの?』
『都に行くのかい?』
クルルもアルルも目を輝かせながらきゅるきゅるきゅるきゅる鳴き始めて、いつまでもやめない上にだんだん声が大きくなってきた。
「行くよ。フェミのお母さんに会ってから、みんなで都に行こう」
そうレノーは受け合った。アルルとクルルは疲れていたはずなのに変な踊りを長々としてから抱き合った。
(何にしても仲間が増えて行く、それはいいことだ)
レノーは
その夜、三人は火事の心配のない場所で焚き火を囲んでいた。何をするでもない。クルルは服のほころびを直し、アルルは頭の触角みたいなものの先に付いた玉をもてあそんでいる。レノーは気になってアルルに質問した。
「アルル……君のその玉みたいなの……それ、何?」
アルルが聞こえないふりをするので重ねて
「知りたいな……案外柔らかいとか……玉の中に水が入ってるとか……ひょっとして、それがないと死んじゃったりして」
アルルは仕方なさそうに一筆書いてレノーに渡した。
『教えない』
「けちだなぁ。じゃ、何か面白い話をしてよ。野菜一つあげるから」
『サクランボが食べたい』
「クマ
『クマ
「レジーのくれたお金やフェミのくれたお金はあまり使いたくないんだ。ごめんね」
『それっておかしくてよ。もらったものは自分のもの。くれた人だってレノーに使ってもらいたいんだから』
クルルが割って入った。アルルも食欲を訴える。
『さっき
レノーがうなり声を上げている間に、二人は次から次へとおいしそうな食べ物の絵を描いてよこす。鳥のもも肉を焼いた絵や
目の前にない料理の色つやや匂いや味までがレノーを苦しめた。彼だって毎日ほとんどクマ
レノーはまだ食べれば育つ少年だ。彼はすっくと立ち上がり、でっかい声で叫んだ。
「野郎ども! 今夜は焼肉だ!」
ギャバーッ。アルルとクルルの行動は素早かった。あっという間に火を消し
「
『レノー、野菜も注文していいかい?』
『レノー、あたくしは
ばんばん頼め、とアルルに言い、クルル悪かったしかし今夜は
店の連中(といっても二人しかいないのだが)があきれて三人を見ていた。何人前
『レノー、お金大丈夫?』
心配してそっとクルルが書き付けをよこした。
「そうだな。じゃあさっきの注文で終わりにしよう」
(足りる、しかしこれは、高額だ)
レノーは張り詰めた気を静めた。
(フェミになんて言おう? ペタリンたちにまんまと乗せられてしまった。いや他人のせいにしてはいけない肉はおいしかったんだから)、と反省した。
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