第10話 ヨクノム(その2)
「クルル、早く、わかりやすく教えてくれ」
クルルはそうしようとはせず、ただレノーの
光はそれらの樹に飛び移り、飛び回った。徐々に速度が遅くなる。アルルはさらに一本の
「トロムトロ。いいだろう、よく来た」
クルルの言う「
「いつもの連中か。いいだろう、行け」
二人はレノーを連れて行こうとした。
「待て。何だお前」
「何だ、と言うと」
「どこから来た? 誰だ?」
「カヌウの所から来たレノーだ」
「クフィーニス! お前もか?」
レノーはうそをつくな、とクルルが言っていたことを覚えていた。アルルとクルルは先に行ってしまった。
「たしかにクフィーニスだけど、ここでは何もしないよ」
「クフィーニス! 信用ならん信用ならん。クフィーニスは危険だ!」
「森を通って、町に行くだけだよ」
顔の形をした色が、赤くなったり黄色くなったり、緑色になったりした。
「もう一人も
「家を
「ならんならん。ならんならん」
樹の向こうから、アルルがそっと戻って来るのが見えた。両手に一つずつトロムトロの実を握りしめている。
(どうするつもりなのか、わからないけど、うまくやれよアルル!)
レノーは話を引き
「本当に、ただ通るだけなんです。ところであなたのお名前は、何て
「聞いていないのか? あのクフィーニスは、お前に教えていないのか?」
「聞きそびれちゃって」
「いかんいかん。私の名はヨクノム」
レノーはつい吹き出しそうになるのをこらえた。アルルがもうすぐそこまで来ていた。レノーは
「うほっ。いやいや、いやいや」
「どうぞ召し上がれ」
「私はトロムトロに目がなくてな。しかし」
「どうぞ召し上がれ」
「いかんいかん。クフィーニスは危険だ」
さらに何かを言おうとしてヨクノムが大きく口と思われるものを開けた時、そこに後ろから来たアルルがトロムトロの実を押し込んだ。光が
「むむ。むむむむむ」
光の顔の色が
「トロムトロ。いいだろう。よく来た。はあはあ」
アルルは次の実を片手に
『
「うほっ。いやいや。はあはあ」
ヨクノムは口からよだれと果汁を
「トロムトロ。はあはあ。いいだろう。いやいや」
光の色がだんだん赤ワイン色になってきた。アルルがまた実をヨクノムの口に押し込んだ。光がゆっくり
「何だお前。むむむむ」
レノーはトロムトロの食べ過ぎを
『
光る
静かになった。ヨクノムの顔が、
(アルルもクルルも逃げ足は速いんだな)
森を抜けるまでさほど時間はかからなかった。ペタリンたちが大きないびきみたいにぶもぶもしている間、レノーも大きく乱れた
走って来た方を見やると、道が消えていた。森は広がっているが、どこか暗い感じがする。
(いや、暗いのは森を出たこの
街道までは遠くなかった。何もない
「アルル、クルル、ありがとう」
へっへっへ、と二人は笑い声を上げた。皆
どちらへ先に行ってもいいとカヌウは言っていたが、どうしたものだろう。ペタリンたちに
「ダグラにしようか」
「じゃあ、アヌサにしようか」
二人はぎゃんぎゃん
『アヌサは
(何だろう、アヌサに何があるのだろう)
クルルに
『あたくしたちはダグラにもアヌサにも行かないの。とにかくアヌサは
ペタリンたちは街道めざして歩き出す。
(そうだ、ここからはもう、ペタリンの後ろを歩くとか、考えないでいいんだ)
そう思いつくと、レノーは二人の後を追いかけた。
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