第12話 逃走(その1)
降り出した雨の中をレノーは
(アルルとクルルはどこだ?)
急がなくてはならなかった。
彼は
(ペタリンの姿はどこにもない。自分だって荷馬車に乗ってダグラに来た、その道を逆にたどっていることしかわからない)
空も地表も薄暗かった。もう日が暮れるのかもしれない。夜になったら、アルルにもクルルにも会えなくなってしまう。
(街道から分かれる道があったはずだ、どちらへ行くべきだろう?
しかし時刻と雨のため
(まだ自分は悪夢の中にいるんだ)
レノーは自分が雨の中を走る姿を、上空から見つめるように思い
(
「アルル! クルル!」
レノーは大声を張り上げた。返事はないし、
(ペタリンがカヌウの村に帰っているとは考えたくない。きっとどこかで俺を待っているはずだ。まさか、もうダグラに着いていたとか? ありうる。でももう戻ることは出来ない)
(
(俺一人で逃げるか? だとしたら、アヌサはだめだ。どこへ行くのかもわからずに、知らない道をたどって、わずかな金と赤い手で「あかし」を探す? 無理だ。いまのうちに、カヌウの村へいったん帰った方がいい。ペタリンたちは自分たちで村に帰るだろう。——本当に?)
しかめ
少なくともペタリンはいない。次の
(落ち着け)
あまり振り返らないようにしながら、橋のそばまで走り、それから歩みをゆるめた。とぼとぼ歩いて、二頭の馬に乗った男たちが叫び声を上げるまで、後ろを見なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます