第20話 アグロウ(その1)
四人の旅は始まっていた。皆で話し合った結果、奇妙な
フェミが
情報は主にフェミが集め、四人の短い会合の
また新しい職に
レノーは
レノーは芸名を用いていた。三人はドブシャリ使いのレジーと、ドブシャリのジョーとスーということになっていた。アルルがどんなにうまい絵を描いても、クルルがどんな気の利いた文句を並べても、たいしたお金はもらえなかった。一通り芸を見せて、十コマにも満たないことが多かった。五コマがいいところだった。その倍稼いでも、やっと十コマだった。
明らかにドブシャリは
「ありがとう、アルル、クルル。おつかれさま」
ペタリンたちは汗をかいていた。水筒を出して水を回し飲みする。ちびちびの
「この村も長居は無用だな。もっと大きな町だったらな……。フェミとは今度いつ会えるかな」
『待ち遠しいのかい、レノー』
アルルも書き付けをよこすようになっていた。
『寂しがってばかりいないで、ちびちびをもう一つどう? ほんと、おいしいわ、これ』
クルルはその魚に夢中だった。アルルがギャースと鳴いた。
「金が足りない。フェミが来なければ、また野宿だ」
三人は静かになった。フェミから必要な金を受け取っていた。が、レノーはまだそれをあまり使っていなかった。
レノーはペタリンたちに聞いたクフィーニスにまつわる話を思い出した。それはペタリンたちに伝わる一つの
『あたしたちはそれはずっと前からクフィーニスのことを知っていたわ。アグロウって知ってる? アグロウがあんなマネさえしなければ、クフィーニスももっと
クルルによれば、能力を使って人を
どこかの国のチギレという町を
『そんなことがあって、クフィーニスの能力はあってはならないもの、
レノーはそんな男の話、聞いたことがなかった。
『でも、大昔の伝説よ。あたしたちの仲間は皆知っているわ』
「実際それは、現在のどこにある国のことなんだろう?」
アルルが、そんなことわかりっこないと言ってレノーをがっかりさせた。
『きっと
(ペタリンの仲間たちがだれか人間にその話をしてきただろうか?)
レノーはアルルとクルルに問いただしたが、二人ともよくわからないと言うばかりだった。
(この村を出たら、フェミの故郷までは遠くないらしい。フェミの母親は俺たちの助けになるだろうか? 俺がクフィーニスだとばれたら敵にまわるかも知れない。それは十分ありうることだ。しかしフェミだって別の能力を持っている。きっと理解のある人なんだろう、そうであって欲しい)
問題はフェミを守るため、彼女の母親が何をするかにかかっている。それについてはフェミも、ヨサ母さんがどういう態度をとるか予想できないと言っていた。
(わからない。予想できない。クフィーニスの明日、いや一分後のクフィーニスがどうなるのかなんてだれにもわからないんだ。クフィーニス本人にも。クフィーニスを
カヌウがあの後どうなったか、レノーたちは知らなかった。きっと大騒ぎになると思ったのに、実際には火事は消されたみたいだし、
レノー自身はここまでよくやっていた。ムネを出てからは危険な目にはほとんど
『だれかこっちへ来るわよ。手に何か持って』
クルルの言葉にはっとして
「レジーかい?」
近づくと、青年はレノーに尋ねた。
「そう、そしてこっちがジョーでそっちがスー」
「じゃああんただ。フェミから手紙を
「フェミは元気かい?」
「ああ。宿屋が
「しかたないんだ。
「そうか、大変だな。どこだい?」
レノーはでたらめを言った。ありもしない町の名だ。
「聞かない名だな。じゃ、手紙はたしかに渡したから。
レノーは礼を言って青年が立ち去るのを確認し、手紙を開いた。
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