第17話 出会い
とある
「こんな所にあなたの
(何か事情があるんだ、でもちょっと
ためらっていると、中から人の声がした。
「クルル、無事だったか。よかった」
(若い男の声、しかもまだ子供かも知れない)
「? どうした、だれかいるのか?」
銀色の髪、きゃしゃな身体、見開かれた大きな目。フェミは
「じゃあ、あなたなのね?」
レノーはフェミをじっと見つめている。彼女はつぶやいた。
「やっぱり、ただの夢じゃなかったんだ」
レノーは少女が現れたことに驚いていた。
(自分とあまり
薄暗い
「中に入って。話はそれからだ」
少女はそぉっと入って来て、クルルが
「君はだれ? クルルとどこで知り合ったの?」
少女は心にしみわたるような笑みを浮かべた。
「フェミ。その子、クルルっていうの? 今日初めて、
「そうだけど、俺はレノー。ペタリンはもう一人いて、病気で寝ているんだ」
「ペタリン?」
「俺はそう呼ぶんだよ。ドブシャリなんかじゃない」
「あたしはクルルが好きよ。寝ているペタリンは、何ていう名前なの?」
レノーはアルルの名前を教えた。部屋の
「君は
フェミは、自分は花屋で
「クルル、レノー、アルル……。アルルは病気なのね? 会わせて」
レノーは彼女を
「少し前から
フェミはアルルのそばに身をかがめて、アルルの顔に手を当てた。
「毎日何を食べていたの? 何かお酒
レノーはちょっと困った顔をして答えた。
「トロムトロの
「どうしてトロムトロを売らなかったの?」
道に
(違う、道に
アルルとクルル、それに俺は、出来るだけ早くダグラやアヌサ、ズンドウの森から遠くへと、夜も昼も駆けて来た。途中で道を外れ、危ない林ややぶの中を、時々わずかな間だけちょっと食べたり水を飲んだりするため立ち止まるだけで、どこにたどり着くのかもわからずに逃げて来た。三人の服にはかぎ
フェミは
「ぬるま湯が要るわ」
クルルはふちの欠けた皿を
(もはや、俺たちには自分の家なんかないんだ)
追われる者の恐怖、追われ続けていることから来る恐怖はレノーをすっかり変えていた。おびえた目、やせていた
(
三人とも
レノーは、相手が敵か味方か、それだけを確認するのに一生懸命だった。アヌサの先で森の炎を見てから、もう五日が経っている。アルルの
(フェミと名乗るこの少女、俺のことを何だと思っているのだろう? うまくごまかさなければならない。でも、もしも俺たちに協力してくれるのなら……。自分たち三人だけでは、どうしようもなかった。フェミは……)
「あたしはあなたたちの味方よ。心配しないで」
「フェミ。どうして、わかった」
何のこと? そう言いながら薬をぬるま湯に
「その……俺の、考えていることを」
いまはアルルの
その間フェミは微笑んでいただけだった。
「レノー、これからアルルは汗をいっぱいかくから。
「そうなんだ。布なんか、ない」
そうなんだ、とつぶやいて、フェミはちょっと考えてから言った。
「あたしが用意する。少し時間がかかるから、待っていてね」
「フェミ……俺たちのこと……」
「だれにも言わないわ」
少女が煙でいっぱいの
「クルル……大丈夫だろうか?」
クルルが書き付けを差し出した。
『心配する前に、魚食べなさい』
夜の
(店に戻って、クララに話さなければならない。クルルたちとは別れたことにする。自分の部屋に行って、荷物をまとめて、クララの母にも店をやめる話をする。レノーたちは旅の途中だろう。何か事情がありそうだ。あたしには
せっかく仲よくなったクララのことを考えると、ちょっと胸が痛んだが、レノーたちについて行きたい気持ちの方が強かった。それは、フェミの強い直観が
行こう 行こうよ
ペタリン連れて
あたしが出会った男の人を
あたしは前から知っている
今日からあたしは旅の仲間
見たことのない国へ旅立つの
あの人 けれど
ジプシーにだって負けないわ
あたしにはわかる
あのひとにはあたしが
必要だって
互いに相手を求めてる
あのひとにはあたしのぬくもりを
あたしにはあのひとのぬくもりを
母さんだって認めるわ
もしも相手を見失い
ペタリンがあたしたちを見つけ
引き合わせてくれるでしょう
歩く 歩くよ
ペタリン連れて
あたしが出会った男の人を
あたしは前から知っている
今日からあたしは旅の仲間
見たことのない国へ旅立つの
冷たい風が吹きつけても
あの人のぬくもり感じるの
温かな気持ちで
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