第15話 春からの贈り物(その2)
花屋に戻ってみると、そこも客でいっぱいだった。クララの母親も
「またもうなくなったの? 早いわねぇ。やっぱりフェミちゃんが売ると
クララがちょっとふくれて、あたしだって売っているのよ、と文句を言う。かごの中に花の
(ドブシャリ!)
フェミはまだドブシャリを見たことがなかった。ドブシャリは
(クララはドブシャリなんか気にしていないみたいだけど、あたしは一度、見てみたい)
フェミはまたクララと二人でかごを下げ、花を売りに出かけた。
「ほんとにいい天気。そよ風が気持ちいいわ」
フェミが言った。しかしクララの返事はなかった。
「あいつ……ミリセントだ。こっちに来る」
フェミを
「フェミじゃない。花屋の娘と、きれいな花の
ミリセントは都の歌姫のような服装をしていた。
「ミリセント、どこの
そう言ってクララはフェミに、行こう、とうながした。
「ハルカ?」
二人の
二人は
「聞こえないの? ハルカ?」
仕方なく二人は足を止めて振り返った。
「小さくて形と色の一番いい奴を」
「何本?」
クララがぶっきらぼうに言い放った。
「『何本にいたしましょうか』でしょう? 一本に決まっているじゃない」
にらみ合う二人にフェミが
「
そう言って花をミリセントに手渡した。
「あら、何これ。ずいぶんいじけた花だこと」
「何ですって」
くってかかろうとしたクララをまたフェミがさえぎった。
「よくお
ミリセントがフェミをにらみつけた。フェミはにっこり
「ふん」
ミリセントは十コマ銀貨を突き出して支払った。
「ありがとうございまぁす。またどうぞ」
くやしそうな顔をしている
「あんなのの父親が前の町長だなんて。えらそーに。ぶちぶち、ぶちぶち。あたしゃ花屋の娘でよかったわよ。あっあの子かっこいい」
フェミは
(クララはあたしを大事に思ってくれている。あたしもクララが好きだ。花は売れているし、天気もいい。祭りなんだから。楽しもう)
ハルカ、ハルカ、と問われるたびに二人は笑顔で花を売った。
(ムネの人々は花が好きだ。都へ行ったって、こんなに売れないだろう。胸や背中、肩や靴にまで花を
七百五十本を売ったところで売り上げが落ち始めた。夜になると
(たくさんの明かりをつけて、飲み物や食べ物、いろいろの
フェミはちょっとした
(あたしはいったい、どこから来たんだろう? どうしてこんな力を持っているの? それを他人に話したら、どうなるの?)
(でもその気持ちにひたってしまっては、だめ)
「……ミ?」
クララがいぶかしい表情でこちらを見ている。客が来ていた。あわてて
「もう一本よ」
あらそうでした、あなたにはきっと人の何倍もいい夏がやって来ますよ。そんな風に
「どうしたの、フェミ」
「ううん、何でもない、もうだいじょうぶ」
「すごいわよ。あと三、四十本で八百本だよ」
「そんなに売れたんだ。でも、もう夕方だし」
「七千六百コマも売れればいいんじゃない?」
「
「お金が入るのはいいけど、
「そういう本人がボーっとしていたくせに」
二人は笑い合った。
(あれ?)
その時フェミの目に何か気になるものが
(何だろう? 変な帽子をかぶった、背の低い女がいる。何かが
見ている
「まあ、あれ、ドブシャリじゃない!」
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