第14話 春からの贈り物(その1)
ムネの町はにぎわっていた。今日はハルカの
春の
「ハルカ?」と
一本が十コマ、それが
「ハルカ?」
「おめでとうございます。何本にしましょうか?」
「三本ね。大きいのがいいわ」
「あたしたちのはみんな大きいだけじゃなく、色もいいんですよ」
クララが花を紙にくるんで女に手渡す
「ありがとうございます」
ふつうは春の娘が花を渡し、夏の娘が金を受け取る。でもフェミたちはそんなこまかいことを気にしたりしなかった。もうかごの中の花は少ししか入っていない。クララと話し合って目標を五百本にしていた。まだ陽が高いのに、もう五百本近く売りさばいたことになる。
花屋に戻ればまたかごをいっぱいに出来る。
「六百、行けるんじゃない?」
フェミとクララは明るい声で笑い合った。フェミはムネの町が気に入っていた。たくさんの店、若者も多く、年寄りも皆親しみやすい。
フェミはこの冬、遠い北の村から出て来たばかりだった。花屋の
しかし二人とも十四歳であることが、お互いを親友とするのにたいした時間を
(でもあたしなら、選ぶんじゃない、会えばわかる、あたしの恋人に)
二人で手に下げたかごには一本の花が入っている。フェミはその花が種から芽を出して大きくなり、葉を出してつぼみを付け、咲いてから
この
それが
「それはとくにおかしな力ではない、でもぜったい人に話しちゃダメ」
もう一度
フェミはヨサの言い付けを守った。それがまず自分だけの力であると気づくまで、たいした時間はかからなかった。そして花や
ただ、これも特別な
雪の中で、彼が前にした
彼の銀色の髪、おびえて見開かれた大きな目、きゃしゃな
一度ではなく、フェミはその夢を何度も見た。
(きっとわかる、この人と会えば)
その夢を見た朝は、起きてからしばらくの間、少年の顔かたちを思い返している。いつか会える、と希望を持つようになるまでしばらくの間があった。ただの夢だと反省していたのだ。しかし、意味のないことなんてないのだと彼女は強く思い直してから、少年の存在を信じることにした。
クララには、あたしの恋人は木こりよ、ふふ、と冗談みたいに言っておいた。たくましい若者を想像したクララを
フェミは自分がヨサの娘ではなく、
だれもがフェミの
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