第4話 沼地
山を
沼地で夜になったら終わりだとレジーが言ったが、ここでは時間もはっきりしなければ、実際、人が通った
あせるな、とレノーは自分に言い聞かせた。レジーがくれた袋の中には、こんなものが入っていた。先にかぎ爪の付いたロープ、
自分のために命をかけてくれた
とにかく進むしかなかった。時には能力を使って
(ここが沼地のどの辺なのか、せめてそれだけでもわかったなら!)
恐れと力の使い過ぎで、息の乱れが止まらなかった。袋から瓶を取り出し、水を一口飲んだ。樹の根元まで行って,
(夜が
夜の闇は
細い月が昇って、彼のいる沼地をほんのわずか照らしていたが、もちろん彼には何も見えなかった。眠っていないで、目を見開いていたとしても、自分は真っ暗な闇の中にいると感じただろう。
彼は夢も見ずに眠っていた。夏の初めとはいえ、夜の沼地はとても寒く、レノーは
(背中が痛い。火をおこさなければ)
しかし身動きが取れなかった。
突然
(いますぐここから抜け出したい。でも)、とレノーは考えてみた。(朝まで眠って、それからまた動けばよいだけのことじゃないか? レジーだって沼地のことなんか知らないに違いない。「あかし」を持たずに谷間に戻り、命を絶たれたクフィーニスがみんなに何かを話していたかも知れないが、それだったら自分の耳にも情報が伝わっているはずだ。クフィーニスたちは沼地の話をして来なかった、きっとそうだ)
レノーはたいまつを手に
(自分は運がいい。ここで朝まで眠ろう)
レノーは枯れた
眠っていれば火は消えてしまう。一度は目を
まだ朝はおとずれていなかった。
(おき火が……、おき火が燃えている)、と彼は感じた。また
それが動いて、彼から少し離れた。レノーは驚いて飛び起きた。何かがそこにいる!
あわてて袋をつかむと、肩にかけ、出してあったたいまつに手を伸ばそうとした。だがたいまつがどこにあるのかわからない。
その赤いものは、変な音を立てながら少しずつ遠ざかる。
(鳥のようでもあり、ネズミのようでもある。人で言えば目に当たる所に二つの赤いものが付いているが、あれは目なのだろうか?
(
頭の先に丸い球のようなものがついた
しばらくレノーとそいつは黙って向き合って立っていた。
ふいにきびすを返して、大きな
(何なんだろう?)
(まさかこいつ、俺をどこかへ案内するつもりなのか?)
(やはり俺を
(先を歩いている後ろ姿も、振り向いた時の顔も、見れば見るほど
翼の付いた腕をはためかせて短い
自分はおかしな夢を見ているのではないか、とレノーは頭を
(おかしなのはこの現実だ、俺は信用していいのかもわからない、
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