第10話 密会
学校からの帰り、僕は何故か陽向ちゃんではなくクラスメイトの
「あんたって、普通よねえ」
「……普通で悪かったね」
「あら、怒った? 一応誉めてるのよ?」
「そうですか……一応ね……」
クラスメイトの平入とは同じ中学出身だけど、クラスは違ったので喋るのは高校になって初めてだ。
中学では何人かうちの学校を受験したとは聞いていた。でも自分で言うのもなんだけど、うちはかなりの難関校なので、多分合格したのは僕と彼女だけのはず。
そんな殆ど初対面の彼女と二人で一緒にコーヒーを飲みに来ている。
今朝話した時かなり調子に乗ってたので敢えて言わなかったが、彼女はかなりの美少女……まあ、僕の
赤みがかかったロングの髪は、綺麗なウエーブがかかり、そのうねりは海面の波の様に頂点がキラキラと輝く。顔は日本人顔なのだが少し濃い、眉も太めでどことなくエスニック的だ。身体も陽向ちゃんの細い身体とは正反対で肉付きの良い、かといって太っているのではなく、出る所は出て、締まる所は絞まっている見事な体型そして高校1年にしては見惚れる様な見事な胸。身長も高く僕とそんなに変わらない。どことなく昔の絵画に書かれている様な、妖精の様なそんな不思議なイメージの女の子だ。
「あんた……何ジロジロ人の身体見てるのよ……いやらしい……」
「そ、そんな事は……」
僕は慌てて目線を反らしコーヒーを一口飲む…………苦っ……一口飲んでコーヒーに何も入れて無かった事に気がつき、砂糖1つとミルクを少し多目に入れてスプーンでかき混ぜる。ぐるぐると黒いコーヒーで渦巻くミルク……何か今の自分の気分の様だ。
「ふん……どうせあんたの愛しの人と見比べてたんでしょ……ハイハイどうぞ自慢でもしてくださいな」
「えーー、そんな自慢なんて……陽向ちゃんの顔が女神の様に綺麗とか、スレンダーでモデル並の体型とか、物凄く優しくて僕の言う事はなんでも聞いてくれるとかなんて言えるわけが……あ……」
じとっとした目で僕を見つめる平入さん……あ、ヤバイついついのろけちゃってたね僕……。
「はあ……なんであんたなんかにあんな人が……ってかそもそもあの人何者なの? あんな綺麗な人芸能人でも見た事ない……なんか神がかってるわよ……悔しいけど……」
「うん……まあ、僕もそう思うよ」
本当にそう、まるで女神、いや、僕にとっては本当の女神様……。
「うわ…………うっとりしてるよ……キモ、引く……」
「……またキモいって? …………まあ、自分でも不思議だよねえ、あんな人が僕のし……」
「……僕の、し?」
「し、親戚の用な付き合いの幼なじみだなんてねえ、あははははは」
「だからそれ本当? それでなんで会長があんたの事をご主人様なんて呼ぶのよ!」
「え? 陽向ちゃんそんな事言ったかなあ~~?」
本当の事なんて言えるわけがない、それこそ陽向ちゃんの立場が、僕は精一杯しらばっくれてみた。
「言った……絶対に言った、私聞いたもん!」
「そ、そうかなあ?」
「言いなさいよ、どうなの? 怪しい関係なんでしょ? ほら、いわゆるSとかMとか、そういうの? やばーーーい高校生で、生徒会長そういうのとかヤバイねえ~~あははは」
平入さんは嬉々としてそう言った。でもその平入さんの姿を見た瞬間僕はある疑問が沸く。彼女は何故こうも僕と陽向ちゃんの関係を知りたがるのか? 仮に陽向ちゃんを、生徒会長を陥れるのなら僕なんかに言わないで直接陽向ちゃんに言った方が効果的だ。
だから僕はその疑問を何気なく聞いてみた。
「あのさあ、なんで僕と会長の関係をそんなに知りたがるの?」
「え!」
「仮にね、もし仮に、僕と会長がそういう関係だとしてさ、それを知って君はどうしたいの?」
「えええ! ええっと……そ、それは……」
至極普通の疑問だと思うけど、何故だか彼女は僕がそう言うとオロオロし出す。目がキョロキョロとして完全挙動不審状態になる。
「会長を陥れたいなら僕とこんな所でお茶なんかしないで直接言った方が?」
「そ、そんなつもりは無いの……ただ、ただ、話を聞きたくて……」
「うーーん、話なら別に学校でも、聞かれて困る事は何もしてないし」
「そうなの!」
「なんでそこで喜ぶ?」
「あ、えっと……」
なにやら調子がおかしいさっきまでの勢いは完全に無くなってしまった……まるで乙女の様に……。
「違ったらごめんね、ひょっとしてさ……ひょっとしたら、僕とお茶をするのが目的とか?」
あははははは、ラブコメなんかでよくあるよね、好きな人の弱味につけ込んでデートに誘うライバルみたいな構図。まあ、僕がそんなラブコメ主人公なわけないしね。僕は怒鳴られる、場合によっては殴られる事を想定して目をつむり身体を硬直させた。
「……………………ん?」
いつまで経って反撃来ない……僕はあれっと思いそっと目を開けると……
目の前には顔を真っ赤にし、涙目でプルプルと震えている彼女がいた。
「そ、そんなわけ無いでしょおおおおおおおおお!」
「時間差だったああああ!」
平入さんは立ち上がり、鞄を持って逃げる様に出口に走り去って行った。
とりあえず殴られないですんだ事にホッとしつつ彼女が去って行った方を見つめる。
「まさか……図星? まさかねえ……」
その場に残されたのは、彼女を呆然としながら見つめる僕と、彼女が顔を赤くした理由と、うっすらと口紅のついたコーヒーカップ。
そして僕が払う事になるあろう彼女の飲んだコーヒーを含め伝票が……。
「えっと……まさかこれが……狙い?」
いや、違う……内緒で会った、天罰かも……
僕は心の中で陽向ちゃんに、僕の女神様にごめんなさいと謝った。
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