22,僕らはいつでも迷路の中
玄関、洗面所、リビング、キッチン。家の中を見渡すと、45坪の桜野家と比べてどこも倍近く広い。
「ねぇねぇ、逢瀬川先生は、学校ではどんな感じ?」
リビングでテーブルを囲い、皆でアイスティーを飲みながら一息ついているとき、紗織が花純に訊ねた。
「人気者ですよ。落ち着いた大人の男性って感じでかっこいいって言ってる女子も多いですし、男子からはよく下ネタ責めにされてあたふたしてます」
「へぇ、そうなんだ」
ニヤリ、紗織は聡一を見遣った。
「な、なんだい? その不敵な笑みは」
「ううん、生徒に手出ししてなければいいけどって、ちょっと思っただけ」
「そ、そんなことするわけないだろう?」
「したじゃん。20年前に」
「えっ、逢瀬川先生……」
先生に限ってまさか……。でも、こういう人ほど禁断の果実に手を出してしまうのかな。
「ほ、ほら、桜野さんが困惑しているじゃないか」
「おっといけない。実はね、私は聡ちゃんの元教え子なの」
「そうなんですか! すごい!」
「それでね、かくかくしかじかあって、ちょうどいまの花純ちゃんと同じ2年生のときからひっそり付き合い始めたんだ」
「き、禁断の恋! いいなぁ、私も恋したい!」
「そして、その禁断の恋から生まれたのが私です」
思留紅が会話に割り込みニコニコと、無邪気なようでそうではない笑みを花純に向けた。
「そうなんだ、思留紅ちゃんは愛されて生まれたんだね」
そう言うほか思いつかなかった。実際にそうなのだろうから、これがいちばん差し障りない文言かなと。
「はい!」
返事をしたときの思留紅の笑みには不純物がなく、花純は母性を孕む穏やかな気持ちになった。
しばらく談笑して、50インチのテレビで撮影したMVの試写をする。
公開前に不自然な点や違和感のある箇所がないかなどを確認に、必要に応じて修正や撮り直しをして公開するのだ。
◇◇◇
『僕らはいつでも迷路の中』
◇作詞、作曲・桃原笑
◇編曲・逢瀬川思留紅、逢瀬川紗織
◇振り付け・海風幸来
◇歌・桃原笑、海風幸来(ラブリーピース!)
あれ? 目覚めたら見たこともない知らない世界
右も左もわからない
さぁどうしよう?
そんなこと言っている間にもほら
時間は過ぎて行くよ
さてそろそろ歩き出そうか
僕らはいつでも迷路の中
まっすぐな道も油断してると崖っぷち
やばいやばいどうしよう!?
慌てても何も良くはならない
覚悟を決めようか
腰を据えるっきゃない
さぁ行くよ!
みんなで感じたいんだ
生きている喜び不安もね
どっちもあるからいまの自分が在るんだ
青い空の下
広がる果てない海
遠くの大きな山はギャラクシーロード!?
無限の可能性感じるんだ!
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