第5話 7月25日

 今日も思うような曲が作れなかったな。

 ノートパソコンを見つめて、宮本はため息をついた。

 時計は夜の22時を少し回っていた。

 さっきからやたら下の階がうるさい。

 ズンズンとビートを刻む重低音が足元から聴こえてきた。

 そう言えば、今夜はナイトプールをするって言ってたっけ。



 リビングの扉を開けると、爆音でアリアナグランデが流れていた。

 咲良と茉奈は水着姿で踊っている。かなりお酒も入っているようだ。

 掛川はそれを眺めながら、ソファに座って酒を飲んでいた。

 ダムを見に行った時に買った海パンをはいている。

「ミヤちゃーん、げんき?」

「踊ろうよー」

「もうちょっと音量下げれないか」

「あーこれ以上は下がらないかもー」

 咲良が大声で即答した。

「きゃはは」

 掛川の隣に座る。相当酔っているらしく、目の周りが赤くなっている。

「よう、なんか飲んだら?」

 そう言って冷蔵庫のほうを指さした。

 宮本は冷蔵庫まで行き、ハイボールを適当に作って一口飲んだ。

 咲良と茉奈はセクシーにお尻を振って踊っている。マッシュルームカットがツヤツヤと光っている。

 宮本はハイボールを一気に飲み干し、テーブルにグラスを置いた。そして咲良のほうへ歩いて行った。勃起しているのがわかった。

「ミヤちゃん、踊ろうよ」咲良が抱きついてきた。宮本はそれを受け止め、肩をつかんで、キスしようとした。

「ちょっ、何するの?」咲良は驚いて反射的に押し返し、宮本は床に転がった。

「あははは」

「残念だったね、ミヤちゃん」掛川が爆笑している。

「うるさいよ」

 宮本はリビングからプールのある中庭に出た。

 足元が少しふらふらした。だいぶ酔いがまわっている。もともとお酒はあまり飲まないし、好きじゃない。

 プールサイドにあったシルバーのエアーマットにごろりと横になった。

 風が吹いていて、気持ちがいい。

 空には星が見えた。

「綺麗だな…」

 真っ暗な夜空に小粒のダイヤのような星が輝いていた。こうやって星を見るのなんて何年ぶりだろう?

 気持ちよくなって、目を閉じた。リビングから聞こえる大音量の音楽もそんなに気にならなくなっていた。

 宮本はR&Bなどブラックミュージックは詳しくはなかったが、夜風に吹かれて聞いているうちに、意外と良いかもしれないなと思った。ロックとR&Bの融合とかはどうだろう?例えばレニークラビッツみたいに。

 自分は今までR&Bのあの感情を晒している感じ、本能をむき出しにする感じが聴いていて恥ずかしくなってしまって好きになれなかった。ロックのほうがまだ文化的な感じがするのだ。だが、掛川の歌唱力なら、ロックにR&Bの要素を少し入れたら、面白くなるかもしれない。

 人の気配がしたので目を開けると、咲良と目が合った。間近で自分のことを上からのぞき込んでいる。髪の毛が顔に当たった。

「何してるの?」

「星を見てた」

 肩のところにおっぱいが当たっている。多分ワザとだ。咲良の体温は暖かかった。

「私とエッチしたいの?」

 そう、君のことが好きになったみたいなんだ。

 そう言いかけた時、キスで唇をふさがれた。

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