第2話 7月23日
Date:2019/7/23(tue)11:02
To :宮本和成
From:長谷川啓介
[お疲れ。まじで?役員て誰?俺も聞いてなかったからさ。
あの山荘は何組も一緒に泊まれるようになってるから、問題ないと思う。
いい曲できたら、メールで送ってよ。
女子大生と一緒なんて羨ましい!俺も行こうかなww]
午前中にメールの返事が来た。
「長谷川さん、女子大生がいるなら来ようかな、だって」
「無理だろ、あの人仕事を抱えすぎていて、絶対に来れないっしょ」
たしかに。長谷川さんは仕事の依頼も多いし、本人も仕事が大好きだ。あの人が休みを取っているのを見たことがない。
掛川はギターを弾くのを止め、ノートパソコンを見に来た。
「んだよ、長谷川さんも知らなかったんじゃん」
「ただ使い方としては、向こうが圧倒的に正しいけどな。社員のご子息が福利厚生として滞在しているわけだからさ」
掛川も苦笑いだ。
「まあな、俺たちは社員でもないしな」
逆に向こうにゴネられたら、こっちが出ていかないとならないだろう。
幸いなことに、昨日の御飯で仲良くなったのが良かったのか、咲良たちは協力的だった。
この2階の応接ルームも、簡易のレコーディングスタジオとして使うことを了承してくれた。
「あの子たち、協力的で助かるよ」
宮本は窓から中庭のプールを見た。水中をイルカのように揺らめく、白いワンピースの水着の茉奈が見えた。咲良はプールサイドにマットを敷いて寝そべっている。
今日は二人とも水着を着ていた。咲良は白と黒のツートンカラーのビキニを着ている。
「でもいい女だよなあ、二人とも。女子大生かあ」掛川は嬉しそうに女の子たちを眺めた。
掛川は女が大好きだ。
*
女の子たちはクルマを持っていないこともあって、宮本の車で一緒にランチを食べに行くことになった。
「曲作りは順調?」
咲良はそう言って、運転する宮本の目を手で覆った。
「うわああ」
「きゃはは」
*
昨日と同じファミレスに行った。
「で?順調なの?曲作り」
「うーん、まだ何とも言えない。始まったばかりだし」
咲良はカップに入ったミネストローネを飲んだ。
「ふーん。曲ってどうやって作るの?」
「うーん、適当にギター弾いたりして、かな」
「それで作れるんだ、スゴいね!」
「そうかな」
「曲作り見に行ってもいい?ジャマしないようにするから」
咲良は胸元の開いたTシャツの谷間を寄せた。たぶんワザとだ。宮本は胸元に視線が落ちそうになるのをガマンしながら、咲良の目を見て話した。
「まあ別に構わないけどね、見に来るのは」
この子たちとは友好的な関係でいたい。これからしばらく一緒なわけだし。
「プールでずっと泳いでて、楽しい?」
掛川が茉奈に聞いたが、咲良が答えた。
「楽しいよ。ね?」
「楽しいですよ」茉奈がにこやかに答えた。表情からしても確かに楽しいのかもしれない。
「ずっと泳いでいるわけじゃなくて、たまに食堂に行ってアイス食べたり、スマホでゲームしたり、のんびりしてます」
「へえ、スマホのゲームってどんなの?教えてよ」
「えーつまんないですよ」
「どんなやつ?俺ゲームやんないし、知らないからさ」
「そうなんですか?えー動物を集めていくやつなんですけど…」
茉奈と掛川がスマホを見ながら楽しそうにしている。
「ミヤちゃんで何歳?」
唐突に咲良が聞いてきた。
「30だよ。掛川も同じ」
「へえ、じゃ10個上か」
そうかハタチか、若いな。目の前の咲良の頬のあたりを見た。たしかに肌がぴちぴちだ。そして、音楽に明け暮れていた自分の若いころを、少し思い出した。
「あたし、年上が好きなんだよね」
咲良はそう言って宮本を見つめて、笑った。
Date:2019/7/24(wed)00:05
To :長谷川啓介
From:宮本和成
[今日の取れ高?添付しますw
まだ始めたばかりなので、掛川と二人で探りながらやっている状態ですが、状態は良い気がします。
なんか、デビューしたころに戻ったみたいな感じがして。
ここの場所、凄くいいです。音楽に集中できます。ありがとうございます。
あと、宿泊している女の子は役員の柴山さんという方のお嬢さんだそうです。]
添付ファイル:rasp0723.mp4
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